産業技術総合研究所(産総研)は、曲面ミラーの絶対形状を非接触かつ2nm精度で計測できる装置を開発した。極端紫外線(EUV)露光装置や放射線施設などで用いられる光学素子の製造や開発、評価といった用途に適用できる。
産業技術総合研究所(産総研)は2026年7月、曲面ミラーの絶対形状を非接触かつ2nm精度で計測できる装置を開発したと発表した。極端紫外線(EUV)露光装置や放射線施設などで用いられる光学素子の製造や開発、評価といった用途に適用できる。
EUV露光装置などでは、集光や波面制御を行うために、極めて精度が高い曲面ミラーを採用している。このような光学素子では、その形状精度が装置の性能に大きく影響する。このため、表面の凹凸だけでなく、曲率半径などを含む絶対形状を正しく把握したうえで、得られたデータに基づき形状を修正する必要がある。ところがこれまでは、非接触で絶対形状を高精度に測定するのが極めて難しかったという。
産総研ではこれまで、走査型角度測定式形状測定装置(SDP)を開発し、直径600mmまでの平面基板について、平面度を5nmという絶対精度で非接触測定する技術を開発してきた。ただ、局所角度が大きく変化する曲面の測定は難しかったという。
そこで今回、自己校正型ロータリーエンコーダー(SelfA)を形状測定装置に組み込むことで、平面形状の高精度測定に用いてきたSDPを、曲面形状にも適用できるよう改良した。従来は、オートコリメーターで反射光角度を直接測定していた。この方式だと、測定位置によって表面の角度が大きく変化する曲面では、測定誤差が生じることもあった。
新たに開発した測定方法は、反射光が常に入射光と平行に戻るよう測定対象を回転させ、その回転角度を測定する方式とした。装置は反射光と入射光のわずかな角度ずれを検出する「光角度検出ユニット」、光を測定対象上で走査する「ペンタミラーと直動ステージ」および、測定対象を回転させる「回転ステージ」からなる。回転ステージには、広い角度範囲を高精度に測定できるSelfAを搭載した。大きな角度ずれをSelfAで読み取ることによって、測定できる角度範囲を広げた。
曲率半径5mの円筒面をもつ光学素子を試作し、開発した装置の性能を確認した。繰り返し測定による形状のばらつきは標準偏差0.46nmであり、1nm未満で安定した測定ができることを確認した。繰り返し測定のばらつきに加え、角度測定や変位測定、測定対象の位置決めなどの要因を見積もった結果、Peak-to-Valley値でみた絶対形状測定の不確かさは2.0nmで、「世界最高精度での測定を実現した」(産総研)。なお、測定長は90mmで測定範囲内における表面角度の変化は約1度に達していて、従来型SDPでは測定できないという。
今回の成果は、産総研工学計測標準研究部門長さ標準研究グループの増田秀征研究員、近藤余範主任研究員、堀泰明研究グループ長、平井亜紀子研究グループ付、工学計測標準研究部門の尾藤洋一副研究部門長らによるものである。
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