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電流比較器にダイヤモンド量子センサーを導入同じ装置で交流と直流の電流比を測定

産業技術総合研究所(産総研)と東京科学大学、量子科学技術研究開発機構(QST)らによる研究グループは、ダイヤモンド量子センサーを用い、交流と直流の電流比を同じ装置で測定できる「電流比較器」を開発した。

» 2026年08月20日 13時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

従来に比べ中心部のサイズは1/3以下、質量は1/10以下に

 産業技術総合研究所(産総研)と東京科学大学、量子科学技術研究開発機構(QST)らによる研究グループは2026年8月、ダイヤモンド量子センサーを用い、交流と直流の電流比を同じ装置で測定できる「電流比較器」を開発したと発表した。

 電流比較器は、発電設備や送配電設備などで用いられている大電流を計測するための機器を校正するための装置。数百アンペア(A)の大電流を計測するには、変流器を用いて数アンペア程度の電流に変換して測定する。この時、元の電流と変換後の電流比を高い精度で評価しなければならない。

 ここで用いられるのが電流比較器である。ところが、測定原理の違いから交流用と直流用は別々の電流比較器が用いられてきた。校正体系も別々に整備されていたという。

 産総研はこれまで、電流比較器などに関する国家標準の維持や管理を行ってきた。東京科学大学はダイヤモンド量子センサーの開発を行い、量子科学技術研究開発機構はダイヤモンド結晶中に高品質の窒素と空孔の複合欠陥を形成する技術を研究してきた。

 今回はそれぞれが開発した技術を統合し、ダイヤモンド量子センサーと電流比較技術を組み合わせた。これにより交流電流比と直流電流比を同じ装置構成で、高精度に測定できるようにした。従来の電流比較器に比べ、中心部のサイズは3分の1以下に、質量は10分の1以下にできるという。

 具体的には、ドーナツ形状をした磁性体の一部に設けた切れ目(ギャップ)に磁束を集中させる。ここに配置されたダイヤモンド量子センサーで、わずかに漏れ出る磁束を検出する。ダイヤモンド量子センサーでは、特定周波数のマイクロ波を印加した時に得られる赤色の蛍光強度が、外部からの磁場を反映した量子状態に応じて変化することを利用した。この変化を読み取ることで、ギャップ中の磁束を検出し、電流同士のバランスを正確に検出できる。周囲の温度変化に対する影響も軽減できるという。

ダイヤモンド量子センサーを用いた電流比較器の構造 ダイヤモンド量子センサーを用いた電流比較器の構造[クリックで拡大]出所:産総研他

 交流測定では、検出した磁束から入力電流に対応する周波数成分を取り出し、理想比からのズレを評価した。この結果、理想比のズレは、磁性材料の周波数特性を考慮した曲線とほとんど差異がないことを確認した。繰り返し測定の再現性も国家基準に求められるレベル以上の性能が得られた。

開発した電流比較器における周波数依存性の測定結果と、測定精度評価の結果(アラン偏差)[クリックで拡大]出所:産総研他 開発した電流比較器における周波数依存性の測定結果と、測定精度評価の結果(アラン偏差)[クリックで拡大]出所:産総研他

 直流測定では、直流電流を入力した状態と入力しない状態での差分を評価した。この結果、直流測定においても高い精度で残留磁束を検出でき、微小な直流電流比のズレに対応する信号が測定できることを実証した。繰り返し測定でも高い再現性が得られた。

開発した電流比較器における直流電流比の測定結果と、測定精度評価の結果(アラン偏差) 開発した電流比較器における直流電流比の測定結果と、測定精度評価の結果(アラン偏差)[クリックで拡大]出所:産総研他

 研究グループは今後、開発した電流比較器における周波数範囲の拡大と感度の向上を目指しながら、実用化に向けたシステム構築に取り組む。

 今回の研究成果は、産業技術総合研究所(産総研)量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)の天谷康孝チーム長、貝沼雄太研究員、物理計測標準研究部門の村松秀和研究員、先進パワーエレクトロニクス研究センターの加藤宙光研究チーム長、東京科学大学工学院電気電子系の岩崎孝之教授、量子科学技術研究開発機構の大島武センター長らによるものである。

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