クラレは2026年9月、都内で記者説明会を開催。半導体やAIデータセンター分野向けの注力事業および製品を紹介した。
クラレは2026年9月14日、都内で記者説明会を開催し、半導体やAIデータセンター分野向けの注力事業および製品を紹介した。
まずは、半導体工場の排水再利用に用いる中空糸膜だ。半導体製造には大量の水を使用するが、近年は水資源の確保が課題になっている。災害や気候変動による水資源の枯渇に加え、半導体工場の一極集中により用水取水源の不足も発生しているからだ。半導体工場では水の再利用も進んでいるが、特にニーズが高まっているのが、濃厚排水(汚れがひどい排水)の回収設備だという。クラレ アクア事業推進本部長兼クラレアクア社長の今井公泰氏は「濃厚排水は処理が難しく、その多くが廃棄されている。半導体工場で水の再利用率を高めるためには、この濃厚排水の再利用が鍵になる」と話す。
クラレは同用途向けに、中空糸膜モジュール「〈アクアヴィクサス〉」を展開する。半導体工場の水再利用を想定して開発した製品で、独自の製膜技術を活用した構造により、クラレの従来品に比べ、約5倍のろ過速度を実現した。中空糸膜の構造は、他社製品では均一だが、〈アクアヴィクサス〉では膜の外側が密に、内側が粗くなっている。この密度の違いが、ろ過速度に効くという。この中空糸膜および、独自のモジュール構造により、従来比で約10倍濁った排水も、ろ過できるようになった。
〈アクアヴィクサス〉は、ろ過膜面に対し垂直に原水を流す全ろ過方式になっている。全ろ過方式は、ろ過膜面に対し平行に原水を流すクロスフロー方式に比べ、低消費電力という利点はあるが、濁りが強い水のろ過には向いていない。〈アクアヴィクサス〉は、独自の中空糸膜とモジュール構造を採用することで、これを解消した。今井氏は「省エネと水処理性能を両立させたのが〈アクアヴィクサス〉だ」と説明する。さらに、従来の全ろ過方式に比べ薬品処理工程を大幅に短縮できる。
排水中に混じる、シリコン(Si)などの有価物の回収に展開することも検討している。〈アクアヴィクサス〉と遠心分離機を組み合わせると、シリコンを高純度のまま濃縮できるので、回収効率を高められるという。従来は、薬品による沈殿物から回収していたが、この方式だと凝集剤のアルミニウムなどが混入し、回収物の純度が低くなる。そのため用途が限られていた。シリコンの他、ガリウム、タングステン、銅、ニッケルなども高純度で回収できるとみている。
クラレでは、〈アクアヴィクサス〉を含めた中空糸膜製品の売上高において、半導体産業向けは6〜7割を占める。今井氏によれば、成長率も半導体向けが最大になっているという。クラレは、同社の中空糸膜製品の販売額は、2025年から2031年にかけて年平均成長率21%で成長すると予測している。「〈アクアヴィクサス〉の商標を獲得したのは2026年度だが、製品自体は約10年前から展開している。3〜4年前から引き合いが増えてきた」(今井氏)。現在は倉敷事業所(岡山県倉敷市)で製造しているが、現在の保有設備は2028年までに最大生産能力に達する見込みで、2029年から投資を行い、生産能力を拡大する予定だ。
なお、〈アクアヴィクサス〉は既に、半導体工場に導入されている。水質の違いなども考慮して設置する必要があるので、既存の工場に導入する場合はある程度調整時間が必要になると、今井氏は説明した。
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