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生成AIは前工程装置市場をどう変えた? ――各装置の明暗と「After AI」の行方:湯之上隆のナノフォーカス(96)(2/5 ページ)

» 2026年10月27日 13時00分 公開

バッチ式から枚葉式へパラダイムシフトした洗浄装置

 図4は、バッチ式洗浄装置と枚葉式洗浄装置の市場の推移を比較したグラフである。25〜100枚のウエハーを一度に処理するバッチ式はスループットに優れているという長所があった。ただし、洗浄中にウエハーからはがれた異物が再付着するという欠点もあった。

図4 洗浄装置のパラダイムシフト 図4 洗浄装置のパラダイムシフト[クリックで拡大] 出所:SBI証券、一部微細加工研究所の推定

 一方、枚葉式は、異物の再付着はないが、ウエハーを1枚ずつ洗うため、スループットに劣るという欠点があった。このような事情から、2007年までは、スループットの優れたバッチ式が洗浄装置の主流を占めていたわけである。

 ところが、2008年を境に、枚葉式がバッチ式を上回るようになる。この背景には、枚葉式のプラットフォームに、8〜12チャンバの洗浄層を搭載する装置が登場したことによる。これにより、異物の再付着のない枚葉式のスループットがバッチ式を上回るようになった。そうなると、バッチ式を使う理由がなくなってしまったのである。

 ただし、その後もバッチ式は市場から姿を消してはいない。その理由は、例えば、3D NANDにおけるリン酸のウエットエッチング装置のように、洗浄装置としてよりも、ウエットエッチング装置としての需要が生み出されたからである。

 さて、このように洗浄装置は枚葉式が主流となったが、その企業別シェアを見てみると、歴史的に激しい攻防戦があったことが読み取れる。

枚葉式洗浄装置の企業別シェアの「4つの時代」

 図5は、枚葉式洗浄装置の出荷額と企業別シェアを示したグラフである。シェアの推移は、大きく「4つの時代」に分けられる。

図5 枚葉式洗浄装置の出荷額と企業別シェア(〜2025年) 図5 枚葉式洗浄装置の出荷額と企業別シェア(〜2025年)[クリックで拡大] 出所:SBI証券、一部微細加工研究所の推定

 第1期(1997〜2006年ごろ)は、SEZ、FSI、Semitoolの欧米メーカー3社の時代だった。そして、SEZは2004年ごろに45%近いシェアを握っていた。

 第2期(2007〜2014年ごろ)は、SCREENが躍進した時代である。SCREENは2002年ごろの10%強から急速にシェアを伸ばし、2008〜2009年には56%に達した。この間に業界再編も進み、SEZはLam Research、SemitoolはApplied Materials、FSIは東京エレクトロン(TEL)に買収された。

 第3期(2015〜2022年ごろ)は、TELと、Samsung Electronics系のSEMESが成長した時代である。TELは2022年に28%近くまでシェアを伸ばした。SEMESはSamsungの投資動向に合わせて大きく上下しながらも、2015年と2017年には20%を超えた。その裏で、SCREENのシェアは40%前後まで下がった。

 第4期(2022年以降)は、Lamが急成長している時代だ。2022年に17%程度だったLamのシェアは、2025年には29.0%まで上がった。2025年のシェアは、SCREENが36.1%、Lamが29.0%、TELが16.8%、SEMESが7.1%である。中国勢が含まれるとみられる「Others」も、2015年ごろのほぼゼロから2025年には10%強まで増えている。

 このように、枚葉式洗浄装置市場は25年間で12倍以上に拡大したが、企業別シェアの争いは激化している。首位のSCREENはピーク時から20ポイント近くシェアを落としており、今後はLamとの攻防がより激しくなると思われる。

 では、2000年から10倍以上に市場が成長したもう一つのマスク検査装置について、以下で分析してみよう。

EUVがもたらしたマスク検査装置の主役交代

 図6は、マスク検査装置の出荷額と企業別シェアを示したグラフである。2000年ごろ約2億米ドルだったこの市場は、2025年には23.4億米ドルとなり、10倍以上に拡大した。特に2019年以降の伸びが著しく、2019年の6〜7億米ドル程度から6年で3倍以上になっている。

図6 マスク検査装置の出荷額と企業別シェア(〜2025年) 図6 マスク検査装置の出荷額と企業別シェア(〜2025年)[クリックで拡大] 出所:SBI証券、一部微細加工研究所の推定

 企業別シェアにおいても劇的な変化が起きた。2000年代のマスク検査装置はKLAの独壇場で、2005年ごろには90%近いシェアを握っていた。ところがEUVによる量産が始まった2019年を境に、レーザーテックのシェアが急伸する。2019年に17%程度だったレーザーテックは、2023年に52%となってKLAを追い越した。2025年はレーザーテックが49.1%、KLAが41.3%、Carl Zeissが8.8%、Applied Materialsが0.8%である。

 主役が交代したのは、EUVマスクが従来の透過型マスクとは根本的に異なるからだ。EUVマスクは多層膜ミラーでできた反射型マスクで、多層膜の中に埋もれた位相欠陥は、EUVと同じ13.5nmの波長の光(アクティニック光)でなければ正確に検出できない。レーザーテックは、独自にEUV光源を開発し、その光源を搭載したマスク検査装置をリリースすることにより、この領域で独占的な地位を築いた。EUVマスクの欠陥は全てのチップに転写されてしまううえ、マスクの保護膜であるペリクルの導入も遅れたため、マスクを検査する頻度は増える一方だった。EUVというパラダイムシフトをとらえた日本メーカーが、絶対王者を逆転したのである。

 次章からは、2022年11月30日にOpenAIがChatGPTを公開して以降、装置市場がどのようなインパクトを受けたのか(受けていないのか)を見ていく。

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