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生成AIは前工程装置市場をどう変えた? ――各装置の明暗と「After AI」の行方:湯之上隆のナノフォーカス(96)(3/5 ページ)

» 2026年10月27日 13時00分 公開

生成AIは装置市場をどう変えたか

 OpenAIがChatGPTを公開した2022年を「Before AI」とし、その年の市場規模を「1」と規格化して各装置市場の推移を示したグラフが図7である。まず目を引くのは2023年の動きだ。露光装置は1.47倍、PVD装置は1.33倍、マスク検査装置は1.27倍と伸びた。一方、ドライエッチング装置は0.76倍まで落ち込み、CD-SEM、熱処理装置、コータ/デベロッパ、CVD装置も0.9倍前後に沈んだ。メモリ不況の打撃は、メモリ投資との結び付きが強い装置ほど大きかった。

図7 2022年で規格化した各種前工程装置市場 図7 2022年で規格化した各種前工程装置市場[クリックで拡大] 出所:SBI証券、一部微細加工研究所の推定

 図8は、2025年(After AI)の倍率を大きい順に並べたものである。後述するが、この間に製造装置市場全体は1.3倍になった。これを上回ったのは、露光装置(1.66倍)、マスク検査装置(1.52倍)、パタンウエハー検査装置(1.52倍)、PVD装置(1.42倍)、熱処理装置(1.40倍)、枚葉式洗浄装置(1.34倍)、CMP装置(1.34倍)の7種類である。

図8 各種前工程装置市場の2022年(Before AI)に対する2025年(After AI)の倍率 図8 各種前工程装置市場の2022年(Before AI)に対する2025年(After AI)の倍率[クリックで拡大]

 下回ったのは、CVD装置(1.24倍)、外観検査装置(1.22倍)、CD-SEM(1.11倍)、ドライエッチング装置(1.03倍)、コータ/デベロッパ(0.98倍)、バッチ式洗浄装置(0.82倍)の6種類だった。

成長性が高い露光と検査装置

 露光装置が首位になったのは、AI半導体向けの先端ロジックと、広帯域幅メモリ(HBM)向けを含む先端DRAMの両方でEUVの需要が増えたためである。2023〜2024年に中国が、ArF液浸などのDUV露光装置を駆け込みで大量に購入したことも寄与した。

 マスク検査装置とパタンウエハー検査装置がともに1.52倍で2位に並んだことも見逃せない。AI半導体のGPUはレチクルサイズに迫る巨大チップで、欠陥密度がわずかに上がるだけで歩留まりが大きく下がる。HBMも、積み重ねたDRAMのうち1枚でも不良があれば積層体全体が不良になる。生成AIの時代には、歩留まりを守る検査の価値がこれまで以上に高まっているといえる。

伸び悩んだドライエッチングとコータ/デベロッパ

 意外なのは、ドライエッチング装置がわずか1.03倍にとどまったことだ。これは、基準とした2022年が3D NAND投資のピークだったことによる。2023年にNAND投資が急減してドライエッチング装置市場は大きく落ち込み、2025年になってようやく2022年の水準に戻った。生成AIの恩恵をまず受けたのはHBM、つまりDRAMであり、NANDへの投資回復は遅れたのである。

 もう一つ意外なのは、コータ/デベロッパが0.98倍と、2022年を下回ったことである。コータ/デベロッパは露光装置と1対1でつながって使われる装置だ。それにもかかわらず露光装置が1.66倍に伸びたのは、露光装置の市場拡大が、台数の増加よりもEUVやHigh-NA EUVの単価上昇によるところが大きかったためだと考えられる。同じ「リソグラフィ工程」の装置でも、生成AIの恩恵の大きさは大きく異なるのである。

 ここまで、各種前工程装置について分析してきた。以下では、半導体市場と装置市場の全体像を俯瞰し、今後、各市場がどこまで成長するかを見ていきたい。

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