東京科学大学と横浜国立大学の研究チームは、産業技術総合研究所(産総研)と共同でシリコン光変調器を開発し、低消費電力で毎秒200Gビットの高速光変調を実証した。波形整形機能の一部を光変調器に組み込むことで、デジタル信号処理(DSP)への依存を抑えた。
東京科学大学工学院電気電子系の川原啓輔助教、西山伸彦教授および、横浜国立大学大学院工学研究院の馬場俊彦教授らによる研究チームは2026年10月、産業技術総合研究所(産総研)の前神有里子研究チーム長らによる研究チームと共同でシリコン光変調器を開発し、低消費電力で毎秒200Gビットの高速光変調を実証したと発表した。
生成AIの普及により、データセンターでは複数のコンピュータを連携させて、膨大なデータを処理する必要性が出てきた。これを可能にするため、高速な光相互接続によってコンピュータ同士を結ぶ技術が注目されている。ここで用いられるのが、電気信号を光信号に変えるためのシリコン光変調器である。ただ、従来の素子構造では高速化や小型化、省電力化といった要求に応えられなかったという。
研究チームは今回、スローライト効果があるフォトニック結晶導波路を用いた光変調器に、波形整形のための電気光学イコライザーを内蔵した。光の変調部を複数の区間に分け、その途中に光を遅らせる経路と、2本の光の経路が交差する構造を設けることで、信号波形を整形する。従来は外部の電子回路が担っていた波形整形機能の一部を、光変調器の構造そのものに担わせた。
開発した光変調器は、産総研の300mmウエハー対応半導体製造装置を用いたシリコンフォトニクスプロセスで作製した。実験に用いた素子は、長さが320μmで電極を含む面積は0.4mm2である。応答速度の指標となる3dB帯域幅は、従来のシリコンフォトニック結晶光変調器に比べ2倍以上に拡大した。
実験では、信号の伝送方式としてPAM4(4値パルス振幅変調)を採用した。これにより、波形のひずみをDSPで補償しなくても、毎秒180Gビットの明瞭なアイパターンが得られた。
簡素な11タップのDSPを受信側に適用したところ、駆動電圧1.5Vで毎秒200Gビットの動作を実現した。光のオン・オフで信号を表す方式では、同じDSPを用い0.6Vで毎秒140Gビットを達成した。この時、変調における1ビット当たりの消費エネルギーは26フェムトジュールであった。この値は、同種の変調器に比べ100分の1だという。
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