では、今回2つ目のテーマ「AIへの投資に関する費用対効果」について、考えてみたいと思います。
まず、国家や企業がAI技術に投資している金額を、ざっくり調べてみました。
上記の表を眺めてみると、民間企業はさておき、国家のAI技術に対する投資規模は、はっきり言って「ショボい」。
AI技術が、国家の根幹をなす技術であるのであれば ―― それが、サイバー戦争における核兵器と同程度の効力を想定しているのであれば ―― かの、原子爆弾開発計画「マンハッタン計画」と同程度の投資*)をしても良いはずです。
*)当時の金額で、21億9100万ドル(現在の価値で、1ドル4000円と見なして)8.8兆円です。それに比べて、現在の国家のAI技術に対する投資は、その0.1〜0.3%程度に過ぎません。
これは、国家が、AI技術を、国家存亡をかけた技術とは見なしておらず(恐らくは国防の根幹とも考えておらず)、ひたすら民間の技術開発頼みにしていることの1つの根拠になると思います。
つまり、政府白書の「働き方改革」などで登場する、『AI技術の活用』は、具体的にイメージされていないと考えても良いと思います。
しかし、私は、それが悪意によるものとは思っていません。結局のところ、誰も(私も)"AI"なるものを分かっていないからです。
さて、次に「なぜ、国家や企業はAI技術の開発を進めたいのか?」という疑問に対して、私は、『人工知能は人間の替わりを期待されている』という仮説を立てました。
前述した通り、わが国の労働人口の減少は、絶望的な状態にあるのですから、私は、この仮説を妥当だと思っています。国家や企業が、労働力をAI技術でカバーしたいと考えるのは当然のことだからです。
しかし、それでも、AIによる労働力の代替が、現状の人件費とトントンか、それ以下でなければ、この仮説は成立しないはずです。そこで今回は、以前計算してみた人間の値段を使って、再度計算してみました。
まあ、ツッコミは山ほどあるでしょうが、取りあえず、「私たち1人の知能には3368万円の価値がある」として計算を強行してみます。
さて、ここで日本の大手企業がAI技術開発に投じているコストを、ざっくり1000億円とみなした場合、一体「何人分のAI」を作ればペイできるのかを考えてみましょう。
ざっくり1000億で3000人分の「人間知能」を作れることになります。一方、日本人の平均収入として、日本のGDPを人口で割ってみて、400万円程が算出されました。とすれば、1000億円の投資に対して、計算上、約10年後に1000億円以上を回収できることになります。
1000億円を10年で回収できるのであれば、これは、財務的には優良な投資対象である ―― とも思えます。
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