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» 2009年06月23日 11時00分 公開

静電容量方式のタッチ・スクリーン、マルチタッチ対応の実現方法ディスプレイ技術 タッチパネル(2/3 ページ)

[John Carey,米Atmel]

相互キャパシタンス方式が有利

 投影型静電容量方式を採るタッチスクリーンで指の位置を判定するには、自己キャパシタンスを測定する方式と相互キャパシタンスを測定する方式の2つがある(図4)。自己キャパシタンスを測定するタッチスクリーンでは、行全体または列全体の静電容量の変化を測定する。

ALT 図4 自己キャパシタンス方式と相互キャパシタンス方式の違い 図の場合、必要なセンサーの数は、自己キャパシタンス方式では8個、相互キャパシタンス方式では16個になる。

 自己キャパシタンス方式は、シングルタッチ用タッチスクリーンでは問題なく使える。しかし、マルチタッチの場合、接触点の曖昧さを解決する方法がない。

 例えば、ユーザーがキャパシタンスグリッドの2つの場所、例えば(X1、Y1)と(X2、Y2)に触れた場合、電圧を加えられた線からコントローラーICに対し、線X1、線X2、線Y1、線Y2にタッチされたことが伝わる。ただし、コントローラーIC側では組み合わせが分からない。(X1、Y2)と(X2、Y1)にタッチされた可能性を排除できない。この問題はタッチスクリーンの「ゴースト発生」として知られている。

 さらに、自己キャパシタンス方式を用いたタッチスクリーンでは、いわゆるスナッピング効果が問題になる。2本の指で操作した場合、各指の接触点が列電極か行電極を共有し、さらに電極に向かって指を動かしたときに起こる問題だ。実際の指の動きよりも速く動かしたように検知されてしまう。ユーザーの指の動きを追尾するような検知が難しくなるため、使い勝手が損なわれる。

 これに対して、相互キャパシタンス方式では、駆動電極と受信電極が直交するようパネルを挟んで並べる。

 相互キャパシタンス方式を使うと、接触点が複数あっても、各接触点ごとに座標が検出される。

 つまり、接触点が2つ存在する場合、(X1、Y1)、(X2、Y2)として検出される。一方、自己キャパシタンス方式では(X1、X2、Y1、Y2)として検出されるため、座標が一意に定まらない。自己キャパシタンス方式で起こるゴースト発生問題は接触点の数に対して等比級数的に悪化するため、接触点が3カ所以上になると、対応できなくなる。

 相互キャパシタンス方式のセンサーは、画面内に整然と散らばる多数の小さなタッチスクリーンと見なせる。各点の静電容量をそれぞれ測定できるため、複数箇所にタッチされたとしても、座標に曖昧さは残らない。技術的には、接触点がいくら増えても正確に検出できる。

 電荷転送技術と相互キャパシタンス方式を組み合わせることで、高いSN比が得られ、寄生容量の問題も解決できる。指先ではなく爪でタッチした場合はもちろん、スタイラスや小さな金属片でタッチした場合に生じる弱い信号でも正確に検知でき、接触点の座標が確定する。

解像度を高める

 センサーの解像度は、駆動電極や受信電極をどのように配置するか、さらにはITO電極とセンサーの対をどのように並べるかによって決まる。第1層にはY軸方向に並ぶ駆動電極を並べ、第2層にはX軸方向に並ぶ受信電極を配置する。さらに、第1層と第2層の間に誘電体を挟み込めばよい。

 検出電極は、電極が交差する地点にそれぞれ設ける。検出電極はコンデンサとして働く†2)。例えば直径2mmのスタイラスの先端で触ったとき、正確に位置を検出したいとしよう。すると、解像度やSN比を高めなければならない。ここで重要なのは電極の密度の最適化だ。スクリーン上に設けた静電容量チャネルとして働く検出電極の密度を高めると解像度は上がる。ただし、製造時にセンサーを配置することがより難しくなる。

 SN比を高めるには、静電容量チャネルの数を増やせばよい。電極を配置する際、行と列の最適な間隔は約5mmである。5mmであれば、ユーザーがスクリーン上でピンチ(つまむ)動作をした場合の親指と人差し指の指先の間のおおよその間隔を見分けられるようになる。つまり、アスペクト比が16:9の4.3インチ型パネルの場合、19行×11列、合計209個の相互キャパシタンス電極を配置すればよいことになる†3)

 電極の密度を高めることで、入力データの質も高められる。例えば、チャネルが200以上になるように電極を配置すると、タッチ箇所の「大きさ」と「形状」を扱える。エンドユーザーが絵を描いたり、署名したりするのも把握できるということだ。さらに、リフレッシュレートを200Hz程度に十分高くすれば、直径2mmのスタイラスでスクリーン上に署名した場合でも検知でき、手書き入力も可能になる。

 このように感度と解像度を高めると、タッチスクリーンの柔軟性は大きく高まる。ただし、「選択性」の問題が生じてくる。センサーの表面近くに電荷を帯びた物体が近づいたことによる静電容量のごくわずかな変化を拾ってしまうのだ。指や耳、顔をタッチスクリーンに無意識に近づけた場合でも、誤って入力データとして扱ってしまう。

 そのため、意味のないデータを廃棄し、必要なデータだけを正確に拾うことが課題になる。データの選択性と正確性を同時に実現するには、静電容量の変化を検知する電極の配置の工夫がもちろん重要だ。さらに十分な量のデータを収集し、適切なアルゴリズムを適用して、入力データの性質を把握できなければならない。

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