連載2回目となる今回は次回と合わせて、アナログ回路を設計する上で「自分なりの答え」を出すために知っておくべき、基本的な法則を紹介します。
連載2回目となる今回は次回と合わせて、アナログ回路を設計する上で「自分なりの答え」を出すために知っておくべき、基本的な法則を紹介します。
最近では、CADが発展したおかげで便利になり、設計者がいろいろと悩まなくても回路を設計できるようになりました。目標特性と設計条件を入力すれば、最適な回路定数を算出するツールもあります。しかし、回路設計ツールの役割は基本的に最適化であり、例えば目標とする特性が得られないときに問題を解決したり、新しい回路を設計したりすることではありません。例えば、演算結果の数値の有効けた数が誤っていないか、問題解決の方向性が正しいかなど、回路設計ツールが出力した結果に対する検証は設計者にしかできないことです。CADで計算する前に電子回路の特徴を知り「自分なりの答え」を出しておくのは、大規模な電子回路になればなるほど、重要なのではないかと思います。
回路設計ツールが出力した結果に対して何らかの判断をするためには、設計者が独自に答えを出し、ツールの結果と照らし合わせる必要があります。回路設計ツールは指示した内容を処理するだけであり、間違った内容を指示すれば、当然のことながら間違った結果を出力します。自分自身が設計したアナログ回路がどのような振る舞いをするのか、自分なりの答えやイメージを持っていなければ、回路設計ツールが誤って出力した内容を、うのみにしてしまうことになります。その結果、誤った設計のまま実装してしまうかもしれません。
自分なりの答えを持つことは、回路設計ツールとの戦いの始まりであり、アナログ回路設計を楽しむ「こつ」でもあります。自分なりの答えを出すためには、いくつかの基本的な法則を知っておくと便利です。その中でも、一番重要で基本的な式は「オームの法則」です。
どのように複雑な動きをする電子部品(デバイス)やアナログ回路でも、3種類の素子と、2種類の電源で構成されています。3種類の素子とは抵抗(R成分)とコンデンサ(C成分)、インダクタ(L成分)(表1)で、2種類の電源とは電圧源(V)と電流源(I)です。
スーパー・コンピュータから携帯電話機に至る幅広い機器に組み込まれた電子回路は、デジタル回路もアナログ回路もすべて、この3種類の素子と2つの電源に分解できます。トランジスタや電界効果トランジスタ(FET)はもちろんのこと、例えば水晶発振器もこれらの素子のみで等価回路を作成できます*1)。
オームの法則は、これら3種類の素子と2つの電源を使って次のような式で表せます。
変形すると、
中学校で習うような基本的な式ですが、これを知っていれば電子回路の「大半のこと」*2)が分かります。極端に言えば、これが電子回路の始まりであり、そしてすべてでもある」と筆者は考えています。
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