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第5回 トランジスタには接続方法が3つAnalog ABC(アナログ技術基礎講座)(1/3 ページ)

アナログ回路を設計する上で、トランジスタの基本的な動作や特性、接続方法を理解するのは大切なことです。本連載でも、トランジスタを活用したさまざまな回路を紹介する予定です。まずはその前準備として、トランジスタの動作や接続方法について大まかに説明します。

» 2009年08月20日 00時00分 公開
[美齊津摂夫ディー・クルー・テクノロジーズ]

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 アナログ回路を構成する重要な部品の1つがトランジスタです*1)。アナログ回路を設計する上で、トランジスタの基本的な動作や特性、接続方法を理解するのは大切なことです。本連載でも、トランジスタを活用したさまざまな回路を紹介する予定です。まずはその前準備として、トランジスタの動作や接続方法について大まかに説明します。

 トランジスタの回路記号を図1に示しました。実は、この回路記号そのものが、トランジスタの動作を良く表しています。この記号を考えた人はすごいなと、回路記号を見るたびにいつも感心しています。

*1) 今回は、バイポーラ・トランジスタについて説明します。CMOS構造に使われる電界効果トランジスタ(FET)も基本的には同じ動作をするのですが、微妙に異なる部分もあります。混同しないように、別の機会に改めて紹介します。

図1 図1 トランジスタの回路記号 回路記号は、トランジスタの動作をよく表しています。

回路記号が動作そのもの

 具体的に説明しましょう。まず、ベース(B)端子とエミッタ(E)端子の間に「矢印」が書かれています。これは、矢印の方向にだけ、電流が流れることを示しています。矢印の方向にしか電流を流さないダイオードが入っているのです。

 次に、ベース端子とエミッタ端子の位置関係にも注目してみましょう。図1(a)のNPN型トランジスタではベース端子がエミッタ端子より上側に、図1(b)のPNP型トランジスタではエミッタ端子がベース端子より上側にあります。これは、トランジスタのバイアス(駆動)状態を表現しています。つまり、NPN型ではベース端子の電圧(ベース電圧)がエミッタ端子の電圧(エミッタ電圧)より大きく、PNP型ではエミッタ電圧がベース電圧より大きいのです。通常、約0.7Vの差があります。

 最後に、コレクタ(C)端子に目を向けましょう。先ほどと違って、このコレクタ端子とベース端子の間には矢印がありません。これは、電流が流れる方向に制限はなく、どちらの方向にも電流を流せることを意味します*2)。ただし大抵の場合は、エミッタ端子に付いている矢印の向きに従って電流が流れます。NPN型であれば、電流がトランジスタ外部からコレクタ端子に吸い込まれ、PNP型であればコレクタ端子から吐き出します。

 では、なぜ矢印が記載されていないのかというと、「電圧が決まらない」からだと筆者は考えています。先ほど、ベース端子とエミッタ端子の電圧の差は約0.7Vと書きましたが、コレクタ端子の電圧(コレクタ電圧)はトランジスタ単体では決まらないのです。これは、コレクタ端子が一定の電流を流し続ける電流源となるためです*3)。従って、どの程度の負荷を、どのようにコレクタ端子に接続するかが決まらないとコレクタ電圧も決まりません。

*2) 例えば、NPN型の場合、ベース電圧がコレクタ電圧より高くなると、ベース端子からコレクタ端子に向けて電流が流れます。この状態では、ベース電流が増えてしまい、電流増幅率(β)や周波数特性といった諸特性が大きく変化するので注意する必要があります。

*3) 電流源については、本連載第2回「回路はすべてオームの法則から(前編)」を参考にしてください。
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