無線通信サービスの選択肢が広がり、無線通信機能を備える携帯型機器が増えることは、利用者にとって喜ばしいことだ。しかし、現在の状況は、利用者とって嬉しい反面で、嘆かわしい状況である。それぞれの携帯型機器に適した無線通信方式が分かりにくくなっている。
携帯電話通信網やWiMAX、公衆無線LAN(Wi-Fi)…。数年前には考えられなかったほど、さまざまな方式の無線通信サービスを利用できるようになった。公衆無線通信サービスの普及に歩調を合わせるように、無線通信機能を備えた携帯型機器が急速に普及しつつある。無線LANを搭載した携帯電話機やネットブックだけでなく、ゲーム機やデジタル・カメラ、音楽プレーヤなども無線通信機能を持つようになった。
無線通信サービスの選択肢が広がり、無線通信機能を備える携帯型機器が増えることは、利用者にとって喜ばしいことだ。しかし、公衆無線LANサービスを手がけるトリプレットゲートの代表取締役CEOを務める池田武弘氏は、現在の状況を「利用者とって嬉しい反面で、嘆かわしい状況だ」と指摘する(図1)。それぞれの携帯型機器に適した無線通信方式が分かりにくくなっているというのだ。
池田氏が指摘する問題を解決する技術の1つに「コグニティブ無線通信」がある。利用する周波数や帯域幅、通信方式などを、その時々の利用状況に合わせて動的に変えるというものだ*1)。例えば、無線LANが使える場所では無線LANを利用し、無線LANが使えない場所に移動したら、3G通信やWiMAXに自動的に切り替えるといった具合である。
コグニティブ無線通信のアイディアは古くからあったものの、これまでは研究開発にとどまっていた。最近になってようやく、いくつかの対応機器が姿を現してきた。2009年2月には、コグニティブ無線通信システムのアーキテクチャ(枠組み)を規定した国際標準規格「IEEE 1900.4」が成立している(参考記事)。そして、2010年4月には、このIEEE 1900.4規格に対応したコグニティブ・ルーターが業界で初めて登場する見込みである。トリプレットゲートが製品化する予定だ(図2)。
このほかIEEE 1900.4規格対応ではないものの、エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)が、複数の無線通信方式に対応し、その時々の状況に合わせて無線通信方式を切り替える「Personal Wireless Router」の実証実験を実施した。NTTBPも将来の商用化を視野に入れる。
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