2010年1月21日に開催された電子情報通信学会のソフトウェア無線研究会では、トリプレットゲートの池田氏が登壇し、コグニティブ・ルーターを製品化する狙いや、現在開発中であるルーターの概要を明らかにした。
池田氏は、「誰でも簡単にワイヤレスでインターネットに接続可能な環境を作りたい」という目標を掲げ、同社を2004年に創業した。無線LAN統合サービスを提供しているほか、各種端末に適した無線接続ソフトウエアや、無線LAN信号を3G通信信号に変換するWi-Fiコンバータ機を販売している。
2010年4月に製品化する予定のコグニティブ・ルーターは、Wi-Fiコンバータ機を発展させたものと位置づけられる(図3)。「さまざまな公衆無線通信サービスの信号を受信して、無線LAN信号に変換する」(同氏)ことを目指したものだ。
具体的には3G通信と公衆無線LAN、WiMAXの3方式に対応する予定である。携帯型機器と公衆無線ネットワークを仲介し、両者を接続する役割を担う(図4)。携帯型機器とコグニティブ・ルーターは無線LANで接続し、ルーターと無線ネットワークは3G通信、公衆無線LAN、WiMAXの3方式のいずれかで接続する。このときコグニティブ・ルーターは、その時々の状況に合わせて3方式のうち最適な方式を選んで無線ネットワークに接続する。
コグニティブ・ルーターは、無線LANとWiMAXの通信モジュールを内蔵する。RFトランシーバ部とベースバンド処理部は、無線LANとWiMAXそれぞれに別系統で備える計画だ。「2つの通信方式に対してハードウエアを共通化し、その上で利用する方式をソフトウエアで切り替えるソフトウエア無線も方法の1つだ。ただ、コストと信頼性の観点から今回は採用しなかった」(同氏)。3G通信には、USB接続の外付け通信アダプタで対応する。
コグニティブ・ルーターを開発する上で重要なのが、利用する通信方式を切り替えるアルゴリズムである。トリプレットゲートは通信方式を切り換えるアルゴリズムの詳細は明らかにしていない。ただ、「利用者が端末に設定した情報(ユーザ・プリファレンス)を通信方式の選択に生かす。これを当社の売りにしたい」(トリプレットゲートの池田氏)と説明した。
コグニティブ・ルーターが準拠するIEEE 1900.4規格は、コグニティブ無線通信システムの構成要素や、それぞれの構成要素が担当する役割、構成要素間の通信手順(プロトコル)などを規定している。複数の構成要素のうち中心的な役割を担うのが、無線ネットワーク側の「NRM:Network Reconfiguration Manager」と、無線端末側の「TRM:Terminal Reconfiguration Manager」である。両者は、相互に連携して最適な無線接続方式を選ぶ。例えばTRMでは、ユーザ・プリファレンスや、NRMなどから得た各種情報を基に、最適な通信方式を利用しているかを判断する(図5)。
池田氏は、「IEEE 1900.4規格に対応することで、2つのメリットが得られる」と説明した。1つはネットワーク接続のトラフィック分散、もう1つはほかの無線機器との干渉回避である。現在、コグニティブ・ルーターの試作機を評価している段階である。
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