これまでオフィス機器や産業機器といった組み込み用途では、PCI Express(PCIe)規格に対応した無線LANモジュールを搭載する上で障壁があった。PCなどと違って生産量の少ない組み込み機器向けに、少量生産・長期供給に対応するモジュールベンダーが少なかったからだ。
これまでオフィス機器や産業機器といった組み込み用途では、PCI Express(PCIe)規格に対応した無線LANモジュールを搭載する上で障壁があった。PCなどと違って生産量の少ない組み込み機器向けに、少量生産・長期供給に対応するモジュールベンダーが少なかったからだ。
サイレックス・テクノロジーは、この問題を解決する小型の無線LANモジュール「SX-PCEGN」を、2010年9月17日に発売する(図1)。ノートPCなどに広く使われている「PCI Express Half Mini Card」規格に対応しており、端子を含めた実装面積は26.8mm×30mmと小さい。「Mini PCI」規格に対応した同社従来品「SX-10WAN」に比べて実装面積を1/3以下に削減したという。
SX-PCEGNは、無線LAN規格「IEEE 802.11b/g/n」に準拠している。「MIMO技術」を採用しており、データ伝送速度(理論値)は300Mビット/秒。利用する周波数帯域は2.4GHz帯である。モジュールの中心となる無線LANチップには、アセロス・コミュニケーションズの「AR9287」を採用した。2.4GHz帯と5GHz帯の2バンドに対応した無線LANモジュール「SX-PCEAN」も用意した。9月29日にサンプル出荷を開始する。
SX-PCEGNの適用対象となる組み込み機器は、業務用アクセスポイントやルーター、ゲートウエイ、VoIPシステムといった通信機器のほか、ディスプレイ端末、POS端末、業務用プリンタ、複合機などである。「最近、組み込み機器にもインテルのAtomプロセッサが採用されている。Atomプロセッサと組み合わせて使う、PCIe規格の無線LANモジュールの需要が高まっている」(同社開発本部長の宮本裕明氏(図2))。
組み込み機器の場合、PCや携帯端末といった民生機器に比べて、製品を生産・出荷する期間が長い。しかも、量産時の製造個数がそれほど多くない。「海外のモジュールベンダーは、PCの1年〜2年という短期の製品サイクルに合わせてモジュールを開発・生産するため、長期間の生産に対応しないことが多い」(宮本氏)。国内のモジュールベンダー各社から見ると海外ベンダーのモジュールは、少量生産時には品質のばらつきが出やすいという指摘もある。
サイレックスは、搭載する無線LANチップが入手できる限り、モジュールの提供を続ける。5年以上の長期供給が目標である。少量生産への対応については、これまで1回の出荷個数が1000個程度の案件も引き受けている。年間の生産個数に換算すると、5万個〜10万個の案件が多いという。モジュールの価格は発注量によるが、1個あたり2000円〜3000円が標準である。
量産時に高い品質を確保する取り組みについては、出荷するすべてのモジュールの特性を試験・調整する。「高い無線特性を得るには、出荷時の調整作業が欠かせない。出力特性や動作温度範囲の変更など、カスタム化も引き受けている」(同氏)。モジュールの開発・製造をソフトウエアも含めて一貫して自社内で実施しており、「何か問題が発生したときの検証作業も迅速に進められる」という。
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