インテルは、米国カリフォルニア州サンフランシスコで2010年9月13日〜15日(現地時間)の日程で開催した「Intel Developer Forum 2010(IDF 2010)」の技術セッションで、セットトップボックスなどの組み込み機器向けに今回新たに発表したSoCプログラムに関する詳細を明らかにした。
同社は、Atomコアを内蔵したSoCの基本アーキテクチャを完成させた。今後は、次世代のプロセス技術を適用して、統合チップの種類を増やしていく予定だ。同社のSoCアーキテクチャ担当ディレクタを務めるRaj Yavatkar氏は、「インテルは2011年に32nm製造プロセスを用いたAtomコア『Medfield』を内蔵するSoCを複数発表する予定だ。2012年には、22nm製造プロセスを適用するコアも発表するつもりだ」と述べた。
インテルはSoC向けに、さまざまな種類のオンチップインターコネクト通信規格を独自に定めてきた。例えばソフトウエアの互換性を保つために導入した内部入出力ファブリックやメモリファブリックだ。グラフィックスなどに向けてWindows以外にも、PC向けLinuxやx86のコヒーレンシ(一貫性)モデルとの互換性を持たせた。
3D画像表示に向くE6xx
インテルは今回のIDF 2010で、「Atom E6xxシリーズ(開発コード名Tunnel Creek)」を正式に発表した。Atom E6xxシリーズは、インテルのLincroft PCチップセットに搭載されていたメモリコントローラを統合し、DDR2対応で667MHz〜800MHz動作のメインメモリに対応する。最大容量は1Gバイトだ。インテルのSSE3拡張命令セットに対応し、2次元(2D)と3次元(3D)のハードウエアアクセラレータを備えた400MHz動作のグラフィックス処理回路も搭載する。さらに、H.264のベースラインエンコードや、同ハイプロファイルデコードも実行できる。
インテルで低電力消費組み込み製品部門担当マーケティング・ディレクタを務めるJonathan Luse氏は、「当社はすでに、60社の早期アクセスパートナー企業と協業して、さまざまなバージョンのチップを手掛けてきた。これらのパートナー企業の約80%は、これらのチップをシステムやボードレベルで採用する顧客企業だ」と述べている。現在は、Atom E6xxシリーズに向けて5種類のコンパニオンチップを開発中だという。このうち3種類はOKIセミコンダクタが、残りの2種類はインテルとリアルテックセミコンダクター、STマイクロエレクトロニクスがそれぞれ開発を手掛けている。
Luse氏は、EE Times誌のインタビューに対して、「各種のコンパニオンチップが登場することを歓迎する」と語っている。
CE4200はセットトップボックス向け
Yavatkar氏は、ケーブルテレビのセットトップボックスに向けたSoCである「CE4200(開発コード名はGroveland)」についても詳細を明らかにした。CE4200は、標準化団体「Multimedia Over Coax Alliance(MoCA)」が定めた家庭内ネットワーク規格のほかにも、3DディスプレイやHDMI 1.4aインターコネクト映像データの符号化方式変換(トランスコーディング)に対応するという。
CE4200は、1.2GHz動作のAtomコアと、イマジネーションテクノロジーズの「SGX535」グラフィックス処理回路のほかに、2チャネルのDDR3対応メモリコントローラを搭載する。さらに、電力管理機能を高めたことにより、米国エネルギー省の省エネ基準規格「Energy Star」に準拠し、条件付きアクセスや広告の挿入などにも対応可能だという。
Stellartonは産業用途に向く
インテルは、今回の技術セッションやインタビューの中で、「Stellarton」に関する新しい情報をほとんど開示しなかった。Stellartonは、単一パッケージにAtomとアルテラのFPGAコアを組み合わせて内蔵する。インテルの新しい組み込み製品の中で、今最も注目を集めている製品の1つだ。
Yavatkar氏はインテルのフェローとの個別セッションの中で、「Stellartonは、統合型組み込みコンポーネントの設計において、柔軟性をこれまで以上に高められる」と述べた。インテルのテラスケール・コンピューティングの研究プログラム担当フェローであるJames Held氏は、「Stellartonを採用すれば、ほとんどの組み込みシステムでASICが不要になるだろう」と述べている。
Luse氏によればStellartonが内蔵するFPGAは、例えば産業用途に役立つという。産業用途では、「Profibus」や「Fieldbus」のような多種多様なインターフェイスに対応しなければならないからだ。この発言は、Stellartonが内蔵するFPGAのロジックエレメントの量が比較的少ないことを示唆している。
インテルもアルテラも今回のFPGAについての詳細を明らかにしていない。アルテラは、FPGAのダイをインテルに供給することと、インテルのみが今回のチップを販売することを明らかにした。Luse氏によれば、アルテラとの契約は排他的ではなく、ほかのFPGAメーカーやほかの種類のチップデザイナーと合意することもできたという。
インテルは、Atom内蔵SoCの製造を一部TSMCに委託すると2009年3月に発表していたが、いまだに委託製造は行われていない。今回のStellartonが最初の製造委託品になる。両社はTSMCの45nmの製造技術を用いてAtomコアを内蔵したSoCの設計・製造に取り組む予定だ。
あるアナリストの推測によれば、両社はSoCの販売先をこれまで見つけられなかった。インテルとチップの設計を共有することにメリットを感じる販売先がなかったか、45nmの製造プロセスを用いたAtomは2次電池で駆動する組み込みシステムに用いるには消費電力が大きすぎるという判断があったためだろう。
Luse氏は、Atomコア内蔵のSoCの販売先が見つからなかった理由を、当時の景気低迷だとした。「(Atom)コアを移植した後に、ビジネス環境が変化した。そこで、我々はTunnel Creek(Atom E6xxシリーズ)に重点を置いたのだ」と語った。
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