今回からは、バイポーラトランジスタよりも広く使われている「CMOSトランジスタ」に注目して、特徴や利点、欠点などを紹介していきます。
本連載ではこれまで、バイポーラトランジスタを使った電子回路の動作を解説し、オペアンプの基本的な設計方法を詳しく紹介してきました。今回からは、バイポーラトランジスタよりも広く使われている「CMOSトランジスタ」に注目して、特徴や利点、欠点などを紹介していきます。
CMOSは「Complementary Metal Oxide Semiconductor(相補型金属酸化膜半導体)」の略で、その動作は、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)になります。相補型(Complementary)と呼ばれる理由は、n型トランジスタと同じような特性のp型トランジスタも、同じウエハー上に作成できるためです*1)。CMOSトランジスタを取り上げる第1回目となる今回は、MOSFETの基本的な動作や特性を紹介しましょう。
図1に、MOSFETの回路記号を示しました。回路記号は、CAD(Computer Aided Design)や半導体製造業者(ファブ)のライブラリーごとに違いは少しありますが、基本的には同じような記号を使います。
FETとして動作するので、「ゲート(G)」と「ソース(S)」、「ドレイン(D)」という3つの端子があります。多くの場合、記号としてはもう1つの端子「バックゲート(B)」があります。この端子は、n型では回路全体で一番低い電位Vssに、p型では回路全体で一番高い電位Vddに接続する端子です。ただ、回路の主な動作には影響を与えない端子なので、説明は後に回します。
バイポーラトランジスタと同様に、記号自体がMOSFETの動作を良く表しています。詳しく説明しましょう。まずゲート(G)は、ドレイン(D)とソース(S)をつなぐ線に接してないので、コンデンサに見えます。実際の動作もその通りで、ゲートとドレイン、ソースはコンデンサのように動作します。つまり、ゲートからドレインやソースに電流が流れないのです。これはバイポーラトランジスタと比べると大きな違いです。ゲートに流れる電流を考えずにすむので、非常に便利です*2)。
p型の記号のゲートには、n型とは異なり、「○印」が付いています。これは「反転」を意味しています(筆者はそのように理解しています)。ゲート電圧が高くなったとき、n型はドレイン電流が増えるのに対して、p型ではドレイン電流が減ります。
ソース(S)に付いている矢印は、矢印の方向に電流が流れることを意味しています(中には、矢印が無い記号もあります)。ドレイン(D)には、バイポーラトランジスタの記号と同様に、矢印がありません。つまり、大半の場合はソースについている矢印の向きの通りに、電流が流れます。n型であれば電子がドレインに吸い込まれ、p型はドレインから電子を吐き出すことがほとんどです。
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