新日本製鉄の八幡製鉄所で生成した水素を集合住宅や戸建て住宅に設置した家庭用燃料電池の他、公共施設、店舗などに設置した業務用燃料電池で使う。燃料電池と水素インフラの両方を実証する。
工場が供給する水素をパイプラインで住宅地域に導き、燃料電池を使って発電する「水素タウンプロジェクト」が北九州市八幡東区で、2011年1月15日から始まった。エネルギー事業者13社が参加する水素供給・利用技術研究組合(HySUT)が実施する。経済産業省によれば、市街地に敷設したパイプラインを使った地域レベルでの実証実験としては世界初である。
経済産業省が主導する「水素利用社会システム構築実証事業」の一環として始めたプロジェクトである。同実証事業では、パイプラインを利用して一般家庭に水素を供給する水素タウンプロジェクトと、燃料電池バスや燃料電池自動車(FCV)が高速道路などを定期運行する「水素ハイウェイプロジェクト」(関連記事「トヨタなど13社が燃料電池車に関する共同声明を発表、2015年国内導入を目指す」を参照)の2つの実証実験を進める。
新日本製鉄の八幡製鉄所で生成した水素*1を、2009年9月に設置した北九州水素ステーションに集める(図1)。その後、パイプラインを経由して一般家庭や商業施設、公共施設に供給する。受け取った水素を1KW級(12台)と3KW級(1台)、100KW級(1台)の固体高分子形燃料電池(PEFC)に供給し、直流電流を得る。100KW級の燃料電池からは90℃の温水が得られるため、空調に用いる。
*1)石炭からコークスを製造する工程で副産物として水素を含んだコークス炉ガスが大量に発生する。
実証実験の対象は燃料電池と水素の2つに分かれる。燃料電池自体の性能を調べる他、太陽光発電や二次電池と組み合わせて運転し、電力供給システムとしての能力を調査する。
水素については、安定供給や安全性確保などを調べる。例えば、水素は本来無臭であり、漏れがあったとしても臭いでは分からない。そこで、臭いを発するC6H10(シクロヘキセン)を水素ステーションで混合する。一方、加えた気体を燃料電池に供給する直前で除去する必要がある。このような付臭技術、脱臭技術の確立にも取り組む。この他、水素に課金するための水素ガス計量システムについても実験する。
水素供給・利用技術研究組合に参加する13社は以下の通り。JX日鉱日石エネルギー、出光興産、岩谷産業、大阪ガス、川崎重工業、コスモ石油、西部ガス、昭和シェル石油、大陽日酸、東京ガス、東邦ガス、日本エア・リキード、三菱化工機。
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