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「SSD」の限界超える半導体ストレージ、TEDが高速/低遅延のフラッシュモジュール販売メモリ/ストレージ技術 NAND型フラッシュメモリ(1/2 ページ)

TEDは、アクセス遅延時間(レイテンシ)が26μs〜30μsと短く、1秒当たりのデータ・アクセス性能を示すIOPSが100万IOPSを超えるほど高い「Fusion-io」の販売を開始した。

» 2011年01月20日 00時00分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 東京エレクトロンデバイス(TED)は、NAND型フラッシュメモリを使った半導体ストレージを手掛ける「Fusion-io」と販売代理店契約を締結し、同社の高性能ストレージモジュール「ioDrive」の販売を開始した(図1)。Fusion-ioは、2006年に設立された企業で、本社を米国に構えている。

 ioDriveは、ハードディスク装置(HDD)の置き換えを狙ったストレージで、特徴は主に3つある。1つ目は、アクセス遅延時間(レイテンシ)が26μs〜30μsと短いこと。2つ目は、1秒当たりのデータ・アクセス性能を示すIOPS(I/O operations/second)が100万IOPSを超えるほど高いこと。3つ目は、エンタープライズ用途での使用に耐える、十分な信頼性と書き込み寿命を備えていることである。

図1 図1 東京エレクトロンデバイスが、2010年1月13日に販売を開始した半導体ストレージモジュール「ioDrive Octal」 記録容量は、5.12Tバイトで、アクセス遅延時間(レイテンシ)は30μs。IOPSは100万を超える。インタフェーイスには「PCI Express 2.0 ×16」を採用した。帯域幅は、読み込み時に6.0Gバイト/秒、書き込み時に4.4Gバイト/秒(データのブロックサイズが、いずれも64Kバイトのとき)。

 従来、さまざま情報を記録するストレージの性能指標のうち重要なのは、価格と記憶容量の比(例えば「円/Gバイト」)だった。もちろん、膨大な量のデータを記録する用途では今後も、価格と記憶容量の比が重要な指標である。

 しかし、Fusion-ioのDirector of Asia-Pacific SalesであるMathew Fleming氏(図2)は、「(特に、ストレージの性能がシステム全体のスループットのボトルネックになっている分野では、)価格と記憶容量の比はもはや、性能指標ではない。1秒当たりに処理可能なデータアクセス量が、顧客が求めている性能指標だ」と語る。東京エレクトロンデバイスの執行役員 CN事業統括本部のCNプロダクト本部長の林英樹氏(図3)も、「半導体ストレージの市場リサーチを2010年に実施したところ、高スループットの要望が強い」と説明した。

図2図3 Fusion-ioのDirector of Asia-Pacific SalesであるMathew Fleming氏(写真左、図2)と、東京エレクトロンデバイスの執行役員 CN事業統括本部のCNプロダクト本部長の林英樹氏(写真右、図3)

 ioDriveは、ストレージの性能がシステム全体のスループットのボトルネックになっている用途に向けたもの。想定している用途は、大量データの迅速な検索や更新が必要なWeb・インターネット関連のストレージシステムをはじめ、データセンターや金融機関、研究機関のストレージシステムなどである。「ioDriveを採用すれば、システム全体のコスト削減や、ストレージシステムを使うサービスの品質向上につながる」(東京エレクトロンデバイス)という。

PCI Expressバスに接続

 一般に、NAND型フラッシュメモリを使ったストレージを、「SSD(Solid State Drive)」と呼ぶ。ioDriveの基板上のチップ構成は、SSDそのものである。すなわち、主に複数のNAND型フラッシュメモリとコントローラICで構成している。しかし、Fusion-ioは、ioDriveをSSDとは呼んでいない。一般的なSSDとは異なり、ioDriveをPCI Express(PCIe)バスに直接接続するというアーキテクチャを採用したからだ(図4)。

図4 図4 ioDriveの設計コンセプト PCI Expressバスに直接接続することで、レイテンシを削減した。

 既存のSSDは、HDDの置き換えを想定しており、PCIeバスに接続されたSATAコントローラを介してホスト側とデータをやりとりしている。こうすれば、HDDとSSDはホスト側から同じストレージとして認識されるため、HDDの置き換えが容易にある。ただ、SATAコントローラにおけるプロトコル変換に要する時間が、アクセス性能を高める上でのボトルネックになっていた。

 これに対してioDriveは、ホスト側にPCIeバスを介して直接アクセスすることで、アクセス遅延時間(レイテンシ)を削減した。ホスト側にioDriveのドライバをインストールする必要があるが、それ以外の追加作業は特に無いという。

 現在、システムの1次記憶(短期記憶)に使うDRAMと、2次記憶(長期記憶)に使うHDD/SSDを比較すると、レイテンシが6ケタも異なる(図5)。具体的には、DRAMのレイテンシはナノ秒レベルで、HDD/SSDはミリ秒レベルである。この差が、コストを抑えてシステムを構築しようとしたとき、データ処理パフォーマンス向上のボトルネックになっていたのだという。ioDriveのアクセス遅延時間は前述の通り26μs〜30μsで、DRAMに対して3ケタの差に縮めたことに相当する。

図5 図5 ioDriveの位置付け 1次記憶であるDRAMと2次記憶であるHDD/SSDのレイテンシのギャップを埋めるストレージ製品だと説明した。

 ioDriveの特徴の2つ目である100万を超えるIOPSの実現に貢献したのは、NAND型フラッシュメモリのアレイ構成である(図6)。チャネル数が24で、同時にアクセス可能なフラッシュメモリ数であるバンク数が8という構成を採ることで、IOPSを高めた。チャネル数やバンク数を増やせばIOPSはさらに向上するかというとそうではなく、コントローラICで最適に制御可能なチャネル数とバンク数がある。

図6 図6 ioDriveが内蔵するNAND型フラッシュメモリのアレイ構成 チャネル数が24で、同時アクセス可能なフラッシュメモリ数に相当するバンク数が8というアレイ構成を採ることで、100万を超えるIOPSを実現した。

 100万を超えるIOPSは、「HDDを200台使って構築したディスクアレイシステムと同等のデータ処理性能」(東京エレクトロンデバイス)だという。単一の基板を使ったストレージモジュールとして、業界で最も性能が高いと主張する。

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