STマイクロエレクトロニクスは、GPSやGalileo(ガリレオ)、GLONASS(グロナス)といった複数の測位衛星システムに対応した測位用SoC「Teseo II」を発表した。
Galileoは、欧州の測位衛星システムで、2014年ころに全面的な運用が始まる見通し。一方のGLONASSは、ロシアの測位衛星システムで、現時点でロシアを網羅しており、まもなく地球全域をカバーする予定だという。
複数の測位衛星システムに対応し、捕捉可能な衛星数が増えれば、高層ビル群に囲まれた道路など、測位衛星からの信号を受信しにくい場所であっても、精度の高い位置情報が得られることになる。
原理的には、4つ以上の測位衛星からの信号を受信できば、位置を算出可能である。ただ、測位用SoCの上空の見通しが極端に悪いと、信号を受信しにくくなり、位置情報を算出するまでに時間がかかってしまったり、位置精度が悪化してしまっていた。
ビル群に囲まれた道路で測位することを想定した、同社のシミュレーション結果によれば、受信機から見通し可能な衛星は、GPSのみに限定すると24時間平均で4.4だったものが、GPSとGLONASSに対応すると7.8に増えた。これに伴って、24時間平均の位置精度は、GPSのみの場合にX m(メートル)だったものが、(X*0.4) mに大幅に改善することを確認した。「複数の測位衛星システムに対応した測位用SoCの製品化は業界初だ」(同社のオートモーティブ・インフォテイメント製品事業部のナビ&マルチメディア担当のマーケティング・ビジネス開発マネージャのGianvito Giuffrida氏、図1)という。
エフェメリス予測機能も搭載
Teseo IIは、機能集積度が高いことや、初期位置算出時間(TTFF)を短縮する機能を搭載したことも特徴だ。
低雑音アンプ(LNA)やRFレシーバ、相関器(「G3 Engine」と呼ぶ)、プロセッサコア(「ARM946」を採用)といった、位置情報を得るのに必要な回路をほぼ集積した(図2)。周辺回路として、Bluetooth通信やSDメモリーカード、USB2.0接続、CAN接続のためのインターフェイスも備えている。
自動車のタイヤの回転数計やジャイロセンサーといったセンサーからの入力を処理するA-D変換回路も集積した。センサーの情報を基に位置変化を算出する推測航法(DR:Dead Reckoning)に使える。推測航法用のソフトウエアも用意しているという。
TTFFの短縮についてはSTマイクロエレクトロニクス独自のA-GPS(Assisted GPS)機能を用意した。具体的には、エフェメリスデータをサーバから取得できる他、エフェメリスデータを予測する機能(「Self-Trained Assited GPS」と呼ぶ)も搭載した。サーバから取得したエフェメリスデータの有効時間は7日、予測したエフェメリスデータの有効時間は5日である。
受信感度は−162dBm、特定条件下での位置精度は1.5m CEP(Circular Error Probability )。ウォームスタート時のTTFFは4秒である(A-GPS採用時)。
車載機器を中心に、民生機器も対象に
主な想定用途は、カーナビや携帯型ナビゲーション機器(PND)、ドライブレコーダ、交通制御システム、高度運転支援システムなど。Teseo IIは、車載用IC向けのストレス耐性試験規格である「AEC-Q100」に準拠するなど、車載用として十分な品質を有するという。この他、タブレットPCやデジタルカメラ、ヘルスケア機器、船舶用機器も対象機器に挙げた。
Teseo IIには、機能がそれぞれ異なる「STA8088EX」や「STA8088」がある。STA8088は、STA8088EXから機能を削減した品種である。いずれもサンプル出荷中で、STA8088EXの参考価格は50万個購入時に約6米ドル。2011年第3四半期に量産出荷を開始する予定である。
2012年には、民生機器に一般的に使われているGPSのL1帯だけではなく、L2帯も受信可能な品種を提供する計画もある(図3)。
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