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トヨタが選んだ、非接触充電の新技術「共鳴方式」とは何かワイヤレス給電技術 共鳴方式(2/2 ページ)

» 2011年04月28日 21時27分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]
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共鳴現象を積極的に利用

 そもそも、なぜ何もない空間を電力が伝わるのだろうか……。

 何もない空間で電力を伝える媒体となるのは、送電側デバイス(コイル)が形成した電磁界である。送電側コイルに電力を供給すると、電界と磁界が空間に形成される(コイルをつかったときは、磁界の成分が主になる)。

 送電側が空間に形成した電磁界を、受電側デバイス(コイル)が離れた位置で受け取ることで、ワイヤレスで電力を伝えられる(図4)。これが基本的なアイデアだ。

図4 図4 空間に形成された電磁界を介して電力を送る 送電側コイルと受電側コイルを共鳴させることでエネルギの伝搬路が生まれる。(a)は受電側コイル(下側)にコンデンサを取り付けていない場合の磁界分布。(b)はコンデンサを取り付けて共振させた場合の磁界分布。受信側コンデンサ付近に磁界分布が形成されていることが分かる。出典:南山大学理工学部システム創成工学科の稲垣研究室

 ただし、何の工夫も施さなければ、効率良く電力を送るのは難しい。高い送電効率を得るために、幾つかの条件を満たす必要がある。まず、送電側コイルから受電側コイルに効率良く電力を伝えるために、共鳴現象を積極的に利用する(これが「共鳴方式」と呼ぶゆえんである)。

 具体的には、共振周波数(コイルが強く反応する周波数)を一致させた送電側コイルと受電側コイルを用意し、送電側コイルには高周波電力を供給して電磁界を形成させる。供給した電力の多くは、前述の通り、電界または磁界として、共振周波数で振動しながら存在している。

 このとき、電界および磁界が空間に形成された領域に受電側コイルを置くと、受電側コイルの共振周波数が、電界および磁界の振動周波数と一致しているために、途端にエネルギの伝搬路が形成されて電力が受電側に送られる。送電側コイルと受電側コイルは互いに強く結合しているため、コイル間の距離が広がったとしても、高い伝送効率を維持できることになる。

「近傍界」の電磁界を活用

 ただ、やみくもにコイル間の距離を広げられるかというと、そうではない。高い効率で電力を送れる範囲を考える上で、「近傍界(near field)」という概念が重要になる。送電側コイルが形成する電磁界は、送電側コイル付近の近傍界と、送電側コイルから離れた「遠方界(far field)」に分けられる。遠方界とは、電磁界がどんどん遠くに伝わっていく成分(放射電磁界)が優位な領域で、この領域を使って一般的な無線通信を実現している。

 これに対して、近傍界は、エネルギの放射に寄与せずにエネルギをコイル周辺に蓄える電磁界成分が優位な領域である。共鳴方式では、この近傍界を電力のやりとりに使う。従って、高い送電効率で電力をやりとりできる範囲はある程度制限されることになる。

 共鳴方式が2007年に実証されるまでは、高い伝送効率を得るには送電側と受電側を密着させ、きっちりと位置合わせする必要があるというのが、常識とされていた。この常識を覆したという点で、共鳴方式の意義は大きいだろう。

 現在、共鳴方式を含む非接触充電技術について、国内外で活発に研究開発が進められている。2011年5月12〜13日には、ワイヤレス給電技術を総合的に取り扱う初の国際学会が、京都で開催される予定だ。

 標準規格の策定も進められており、CEA(Consumer Electronics Association)や、SAE(Society of Automotive Engineers)が活動を進めている。

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