まず、GND電圧や電源電圧の付近では、入力と出力がずれてしまうという直流特性の問題に取り掛かります。図2の過渡解析の結果を見ると、出力電圧は十分にGND電圧と電源電圧に張り付いていましょう。このことから分かることは、オペアンプの出力段そのものには、十分な能力があるということです。問題の原因はどうやら、入力段にあるようです。
図3にこれまでに設計したオペアンプの回路図を示しました。原因を分析する上で、注目すべき電圧は、トランジスタX7とX8の接点部分の電圧Vsです。ここに注目して、各部の電圧や電流をプロットしたのが図4になります。
それでは、図3と図4を使いながら、原因を分析していきます。オペアンプをボルテージフォロアとして使っているということは、トランジスタX7のゲート電圧と、トランジスタX8のゲート電圧がほぼ等しくなります。なぜなら、ボルテージフォロアでは、入力電圧(V+)と出力電圧が等しく、出力は入力電圧(V−)と接続されています。
従って、図3のV+とV−はほぼ等しくなり、X7とX8のゲート電圧も等しくなります。その結果、入力電圧(V+)を電源電圧(Vdd)に近づけていくと、X7のゲート電圧も、X8のゲート電圧も、Vddに近づくことになります。ボルテージフォロアの回路図は、前回(第29回)の図4(a)を確認してください。
このとき、X7とX8のゲート-ソース間電圧(Vgs)は常にほぼ一定で、電流源X3によってX7とX8には一定の電流が流れています。このため、X7とX8で構成した差動対の両ゲート電圧がVddに近づくと、Vgsが一定であるため、ソース電圧VsもVddに近づくしかありません。
しかし、出力段のトランジスタX1のゲート電圧Voが、出力段に電流を流そうと電源から下がってきます。つまり、トランジスタX8のドレイン電圧Voとソース電圧Vsが近づき、Vdsが減少することになります(図4下図の(1)の部分を参照してください)。Vdsが減少するということは期待通りの電流が流れず、利得を失うことになります。このため、ボルテージフォロアとして使っているオペアンプの利得が減少し、それによって入力と出力の電圧にずれが生まれてしまうのです。
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