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「あの手この手が必要です」、モバイルの“トラフィック爆発”に立ち向かう無線通信技術 LTE(1/2 ページ)

ノキア シーメンス ネットワークスの「Liquid Net」は、データトラフィックの変動に合わせた自律的なネットワーク構築を支援する新たなコンセプトだ。モバイル端末のデータトラフィックの急増に対応する無線ネットワークとして通信業界に提案している。

» 2011年11月17日 07時00分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 2015年、移動体通信の全世界のデータトラフィックは現在の20倍に達し、年間で40EB(エクサバイト)を超える――。ノートPCやタブレットPCといった動画を楽しめるモバイル機器が移動体通信網を独占する。加えて、スマートフォンの利用者が急増することでそのデータトラフィックも毎年、凄まじい伸び率で増えていく。

 このようなトラフィックの爆発に、通信業界はいかに立ち向かうのか。通信機器大手のノキア シーメンス ネットワークスは、データトラフィックの変動に合わせた自律的なネットワーク構築を支援する新たなコンセプト「Liquid Net」を提案している。同社が2011年11月16日に開催した報道機関向け技術説明会で、Liquid Netを実現する構成技術を紹介した。

ノキア シーメンス ネットワークスの日本法人の代表取締役社長を務める小津泰史氏(左)、ノキア シーメンス ネットワークス研究所の無線システムパフォーマンス 特別研究員であるHarri Holma氏(右)。

データトラフィックに合わせリソースを最適化

 Liquid Netは、無線通信インフラのコアネットワークをつかさどる「Liquid Core」、バックボーンのデータ伝送を担当する「Liquid Transport」、アンテナや基地局、無線インフラをまとめた「Liquid Radio」の3要素で構成している。技術説明会に登壇した、ノキア シーメンス ネットワークス研究所の無線システムパフォーマンス 特別研究員であるHarri Holma氏は、このうちのLiquid Radioに焦点を当て、これに盛り込まれている技術を紹介した。

データトラフィックの変化に合わせた自律的なネットワーク構築を支援する「Liquid Net」(左)と、その構成要素の1つである「Liquid Radio」の主要技術。

 Liquid Radioの主要な構成要素として同氏が挙げたのが、「自己組織化ネットワーク(SON)」と、「ベースバンドプリーフィング」、「アクティブアンテナ」である。まず、自己組織化ネットワークとは、無線ネットワーク上の異なる無線通信方式の選択や、マイクロセル、ピコセル、フェムトセルといった規模の異なる基地局の動作や出力、各種パラメータ設定などを最適化する仕組みのこと。基地局の消費電力やセル間の干渉を抑制し、移動体のハンドーオーバーや基地局の負荷バランスを調整できるといった効果がある。

 次にベースバンドプリーフィングとは、現状では基地局ごとに配置されているベースバンド処理装置を1カ所に集め、集中管理する機能のこと。時間帯や設置場所によって異なる処理負荷を平均化することになるため、装置リソースの最適化につながる。

 最後のアクティブアンテナとは、アンテナに能動素子やRFトランシーバ部を組み合わせて、インテリジェント化したアンテナのことである。例えば、アンテナの指向性を変えるビームフォーミング機能を搭載することで、データ伝送能力を高めることができる。これらの機能を組み合わせることで、設備投資を極力抑えつつ、データトラフィックの増加に対応する自律的なネットワークを構築できると説明した。

アンテナに能動素子やRFトランシーバ部を組み合わせたアクティブアンテナ(左)と、自己組織化ネットワーク(SON)のデモ。SONのデモでは、移動体端末のハンドオーバーの設定パラメータを調整することで、接続が切断してしまう端末数が減ることを見せていた。

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