モバイル機器や工業/産業機器といった幅広い用途で状態をセンシングするのに広く使われているのがジャイロ(角速度)センサーです。水晶材料を使ったジャイロセンサーの仕組みや特徴、ジャイロセンサーを採用するときに気を配るべきポイントを解説しましょう。
本連載では水晶デバイスに焦点を当て、水晶材料の特徴や、水晶材料を使った代表的なデバイスである水晶振動子や発振器の動作原理や特徴、使いこなすために知っておくべき基本事項を解説してきました。今回は、水晶デバイス基礎講座の最終回です。
水晶デバイスというとタイミングデバイスを思い浮かべる読者の方も多いと思いますが、用途はそれだけではありません。本連載の「第1回 クロックだけが水晶デバイスではない」に紹介した通り、センシングデバイスやオプトデバイスの材料としても使われています。
水晶材料を使ったセンシングデバイスの代表例として、ジャイロセンサーがあります(図1)。ジャイロセンサーの素子材料には、セラミックやシリコン、水晶など数多くの種類がありますが、その中でも水晶材料を使った品種は、温度に対する安定性が高いことや、応答性が良好で雑音耐性が高いといった特徴があります。水晶ジャイロセンサーの仕組みや特徴、ジャイロセンサーを採用するときに気を配るべきポイントを解説しましょう。
ジャイロセンサーは、センサー本体の回転量を電気信号に変換し、角速度として算出するデバイスです。代表的な構造には、センサー内部の振動を利用する「振動ジャイロ」があります。センサーが回転すると、センサー素子の振動する部分と垂直の方向に、「コリオリの力」が発生します(図2)。コリオリの力は、19世紀のフランスの物理学者であるコリオリが提唱した物理量であり、回転する座標系における慣性力です。コリオリの力は、センサー素子に新たな振動を発生させますので、この振動量を基に角速度を求めることができます。
ジャイロセンサーからの信号を検出する流れは、以下の通りです(図3)。
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