白熱電球を段階的に廃止する法令が2007年に制定された米国。だが、それから5年が経過した今も、白熱電球は広く流通している。「白熱電球に合わせて発展してきた技術に、新しいLED技術を適合させることは難しい」――。LED照明開発に携わる研究員は、このように語る。
米下院議員であるMichele Bachmann氏は果たして、最先端の照明技術に“明るい”のだろうか?
米国政府は近年、エネルギー効率に優れた新しい照明器具を導入するよう消費者に求めている。これに対し、Bachmann氏は、ここ数年間、トーマス・エジソンが発明した伝統的な白熱電球の継続的な使用を訴えるキャンペーンを率いている。
一方、米オレゴン州ポートランドにある政府主管のパシフィックノースウエスト国立研究所(Pacific Northwest National Laboratory)でエネルギー部門のシニアエンジニアを務めるMichael Poplawski氏は、LED照明の普及を阻む問題の解決に取り組んでいる。
米カリフォルニア州サンディエゴで開催された「Design West」(2012年3月26〜29日)に登壇したPoplawski氏は、LED照明を有効的に活用する方法や、導入コストの削減を図る上で障害となっている事項について説明した。その際、何度も“complicated(複雑)”という表現を用いている。
Poplawski氏が強調したのは、電球が単なる“電球”であるのに対し、LEDは半導体デバイスであるという点だ。同氏はプレゼンテーションの中で、彼の研究グループが解決に取り組んでいる、LED照明の4つの課題について説明した。これらの課題とは、ちらつき、調光、電力品質、そして、既存の照明器具との互換性とも絡む寿命限界である。
ちらつきは、どんな照明器具にも発生する現象である。個人の視覚感度により差はあるものの、消費者はある程度のちらつきを感じるはずだ。なお、ちらつきという現象は、1971年の映画「アンドロメダ…」で一気に注目の的となった。同映画の中で、研究室の照明のストロボ発光が、登場人物のてんかん発作を引き起こしたシーンが出てきたのだ。
Poplawski氏は、発作に加え、頭痛、疲労、目のかすみ、眼精疲労による作業効率の低下など、ちらつきが引き起こす可能性のある、その他の症状にも言及した。
LED照明の利点として、標準的な白熱電球に比べるとちらつきを軽減できる事が挙げられる。一方で、欠点も研究によって明らかになっている。LED電球の種類によって、ちらつきの程度や頻度が大きく異なるという点だ。逆に、白熱電球では、ちらつきの程度が一定しているので、どの白熱電球でもちらつきの度合いをある程度予想できる。
Poplawski氏の研究チームは現在、ちらつきを最小限に抑えたLED照明の開発に取り組んでいる。ちらつきの度合いを消費者に分かりやすく提示するためには、まずは、ちらつきの程度を計測する方法を確立することが必要になるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.