Poplawski氏の研究チームが取り組んでいるもう1つの課題は、調光である。現在、多くの家庭で用いられている調光器は、白熱電球や蛍光灯向けに設計されたものだ。Poplawski氏は、既存の調光器に対応可能なLED電球を開発することの難しさを説明した。消費者は、既存の調光器でもLED電球のまぶしさを低減できると単純に考えるかもしれないが、Poplawski氏は、「20世紀に設計された調光器と、21世紀に普及し始めたLED照明を適合させるのは簡単ではない」と述べる。
Poplawski氏は、「この世に、予測可能なことなど存在しない。既に確立された技術で成り立っている現代社会においては、新しい技術を適合させることは、常に大きな課題になる」と語った。
調光と同様に難しい問題は電力品質、つまり、継続的に一定の電力を各世帯で確保できるかどうかである。落雷や、電力需要の急増は、既存の照明システムとは異なる形でLED照明システムに影響を与える。電線やケーブルテレビの回線、電話線は、同じ電柱を経由している場合が多いが、そこにLEDネットワークを追加することは、一部分、あるいは全てのネットワークに何らかの影響を及ぼす可能性もある。
また、Poplawski氏は、寿命限界に関わる問題として、既存の照明器具との互換性に言及した。古い形態の照明器具は、新しい技術を用いたLED電球を取り付けるには不適切であるため、過熱などの不具合の原因となり、結果としてLED電球の寿命を縮めてしまうこともある。LED電球が、表示されている寿命時間よりも早く切れてしまうとしたら、寿命が長いというLEDのメリットは大きく損なわれてしまうことになる。
実際、LED電球を古い形態のソケットにねじ込むと、多くの場合、本来の寿命よりも早く切れてしまうため、Bachmann氏をはじめ、LED照明に幻滅する消費者も多い。Poplawski氏は、「LED電球の取り付け方をきちんと知らない消費者は多い」と嘆く。
2007年、ブッシュ大統領(当時)は、白熱電球の段階的な廃止を推し進める「エネルギー自給・安全保障法(Energy Independence and Security Act of 2007)」に署名した。しかし、それから5年を経過した現在も白熱電球は全米で広く流通している。こうした状況は今後数年間は続くだろう。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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