OJT(On the Job Training )は、若手を育成する代表的なシステムです。しかし、現場によってはOJTがうまく機能していないケースも多く見られます。その原因は、“教え方が分からないベテラン”と“聞き方が分からない若手”の間に生じるミスコミュニケーションだと言えます。
筆者自身、駆け出しのエンジニアだったころは「いまどきの連中は…」と言われ続けました。また、「新人類世代」と呼ばれることに対して、あまり良い気持ちを持っていませんでした。たまたまその時代に生まれ育っただけで、こちらが望んだわけではないのですから。
「ゆとり世代」についても、まったく同じことが言えるでしょう。その時代の大人たちが、勝手に「新人類世代」や「ゆとり世代」と名付けただけのことです。
いつの時代も「いまどきの若者は……」と言う人間は存在します。これは、100年前も100年後も変わることはないでしょう。そして、きちんと話の分かる上司、話ができる若手がいること。これもまた、昔も今も変わらないことです。上司と若手のどちらかが悪いのかという悪者探しをしても何も解決しませんし、この連載でそれをするつもりもありません。
携帯やスマホなどバーチャルなコミュニケーションに慣れ親しみ、ゆとり教育を受けた世代と、ベテランエンジニア世代は、どのように向き合えばいのか。それをお伝えしていければと考えています。
前回、次期新製品のメインボードを開発するチームの主力メンバーに起用された入社2年目の佐々木さん。悩む佐々木さんは、開発2課に所属する同期の加藤さんに相談しました。
今日、田中課長から新製品の開発チームに入ってくれって言われたよ。
マジ? やったじゃん!
不安なんだよ。お前はもともとできるヤツだからいいけど。それに、先輩も面倒見がいいって言ってたよな。
俺もお前も大差ないって。そりゃ、俺の先輩が面倒見がいいのは確かだけど。
この1年、実験の手伝いや雑用しかやってないんだ。開発って言われても正直、自信ない。
でも、せっかくのチャンスじゃん! 絶対できるって。自信持てよ。
(そんなこと言われてもなあ……。やったことがない、教わったことがないことに、どうやって自信を持てばいいんだよ……。)
新入社員の時からヒット製品の開発に関わった同期の加藤さんをうらやましく思っていたのですから、今回のことは願ってもいないチャンスのはずです。しかし、未経験であることに対する不安が、佐々木さんの心に重くのしかかっていました。
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