Googleの新型タブレット「Nexus 7」の出足が好調だ。ディスプレイサイズは、先行してヒット商品となったAmazonの「Kindle Fire」と同じく7インチ。9.7インチの「iPad」で首位に立つAppleに対して、小型版の投入を強いる圧力が高まっている。そのNexus 7を分解したところ、他社のタブレットでは見慣れない台湾ベンダーの部品が見つかった。
Amazonは2011年に、同社にとって初となる自社ブランドのタブレットとして「Kindle Fire」を発表。200米ドルを下回る価格で販売し、消費者向けエレクトロニクス機器の市場に衝撃を与えた。オンラインストアであるAmazonが消費者向け機器の市場に進出したことについて、懐疑的な見方が大半だった中、その決断をたたえる向きもあった。Amazonは、自社が抱える膨大なオンラインコンテンツを活用できることを強みに、タブレット市場で首位を独走するAppleに対してコンテンツで勝負を挑む戦略に打って出たのである。
Kindle Fireは瞬く間にヒットした。Amazonの電子書籍や楽曲、映画などのライブラリを取りそろえるとともに、優れた機能を搭載しながら業界屈指の低価格を実現したことが成功の要因だとみられている。市場調査会社である米国のInternational Data Corporation(IDC)によると、2011年第4四半期におけるKindle Fireの販売台数は600万台を上回り、Amazonはタブレット市場全体の16.8%のシェアを占め、同市場で第2位の座を獲得したという。
しかし不思議なのは、このKindle Fireを模倣しようとするメーカーがほとんど現れなかったという事実だ。タブレットを手掛けるメーカー各社は、今もなおAppleに対抗することを目指しており、iPadと同等またはそれを上回る仕様を備えた製品を投入している。その結果、400米ドルを下回る価格帯のタブレットはほとんど存在しないという状況にある。
こうした中で、Kindle Fireに対抗するタブレットを提供できるだけのリソースやコンテンツを保有しているのは、おそらくGoogleだけなのではないだろうか。
Googleが自社ブランドを付したAndroid端末の第一弾として投入した「Nexus One」は、同社が消費者に対して初めて直接販売した携帯電話機だ。ハードウェア設計と製造は台湾のHTCが担当した。このNexus Oneが“ひな型”の役割を担い、後に「Nexus S」や「Nexus One」、「Galaxy Nexus」などのGoogle端末が続々と発表された。Googleは、これらの製品を手掛けるに当たり、ハードウェア設計と製造については大手機器メーカーと協業関係を構築して委託し、自らはユーザーインタフェースや特定の機種に向けたAndroid OSの最適化に注力してきた。
そしてGoogleは2012年6月27日に、同社の開発者向けイベント「Google I/O」において、Googleブランドのタブレット「Nexus 7」を発表した。販売価格は199米ドルで、Kindle Fireと真っ向から勝負することになる。iPadを競合とする他のタブレットメーカーは、Android OSの中でも特にバージョン3.0(コードネーム:Honeycomb)を長期間にわたって採用してきた。一方でGoogleのNexus 7は、最新バージョンのAndroid 4.1(開発コードネーム:Jelly Bean)を搭載する。
Nexus 7は、Kindle Fireと同じく、他社のタブレットに匹敵する性能を備えるとともに、Googleが運営するWebサイト「Google Play」(旧称:Android Market)からアプリや映画、ゲームなどの幅広いコンテンツを入手できるという強みを持つ。7インチのディスプレイと、NVIDIAのクアッドコアプロセッサ「Tegra 3」を採用する。また、1GバイトのRAMを搭載し、ストレージについては最大16Gバイトのモデルを用意している。製造は台湾のASUSが担当する。
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