NVIDIAのTegra 3プロセッサは、最初にASUSのタブレット「Eee Pad Transformer Prime」に搭載されたのを皮切りに、幾つかの端末でデザインウィンを積み重ねてきた。UBM TechInsightsが運営するIRIS(Information Retrieval Insights System)データベースによると、Tegra 3はこれまでに少なくとも5つの機種で採用されており、その中でも大型のデザインウィンとしてはMicrosoftが2012年6月に発表した自社ブランドのタブレット端末「Surface」が挙げられる。
Tegra 3は、モバイル機器向けとしては業界で初めてクアッドコアのCPUを集積した、1.3GHz動作の低消費電力SoC(System on Chip)で、12コアのGPUも搭載している。なお、CPUについてはクアッドコアに加えてもう1個、負荷の低い処理を専門的に担う低速クロック動作のコンパニオンコアを備えており、NVIDIAはクアッドコアとこの低速コアを切り替えて使う技術を「Variable Symmetric Multiprocessing(vSMP)」と呼んでいる。
筆者が所属するUBM TechInsightsは、Nexus 7を分解し、主要部品の供給ベンダーなどを調査した。なおUBM TechInsightsは、米EE Times誌と同じくUnited Business Mediaの傘下にある技術情報サービス企業である。
Nexus 7で採用された半導体チップを供給するベンダーの中には、タブレット各社の端末でもおなじみの大手企業が多い。その一方で、新しい顔ぶれもあった。
各社のタブレットでも採用事例が多い大手ベンダーとしては、例えば、Maxim Integrated Productsが電源管理のメインチップとして「MAX77612A」を供給する他、Texas Instruments(TI)も電源管理チップ関連で2つのデザインウィンを獲得した。SK Hynixは、メインボード向けに2GビットのDDR3 SDRAMモジュールを提供する。メモリではさらに、Kingston Technologyが8Gバイトのメモリモジュールを供給している。これはSanDisk/東芝が製造したものだ。また、NXP Semiconductorsは、NFC制御用チップ「PN65 NFC」をセキュアエレメント(SE:Secure Element)として提供している。PN65 NFCは、Samsung Electronicsの最新スマートフォン「GALAXY S III」でも採用されたチップである。
この他にもBroadcomは、Bluetooth 4.0とFMの無線トランシーバ機能を統合したIEEE 802.11n対応Wi-Fiチップ「BCM4330」と、GPS受信チップ「BCM4751」を提供する。なおWi-Fiチップについては、台湾のAzureWave Technologiesが自社ブランドのモジュール「AW-NH665」に組み込んで供給している。
今回のNexus 7の分解で見つかった、タブレット分野であまりなじみのない半導体ベンダーの1つが台湾のELAN Microelectronicsである。同社が提供するのはタッチスクリーン用コントローラだ。当社(UBM TechInsights)は以前に、中国市場向けの携帯電話機を分解した際にELANのマイコンが搭載されているのを確認していた。これに対してNexus 7は世界市場で販売される製品であり、この台湾の半導体ベンダーは大きなデザインウィンを獲得したことになる。
ご覧いただいたように、GoogleのNexus 7は、ハイエンドプロセッサを搭載した上、Android 4.1に向けて数々のアプリケーションを最適化しながらも、8Gバイトモデルで199米ドルという価格を実現したことにより、タブレット市場に大きなインパクトを与える可能性がある。実際にその最初の兆候として、Nexus 7の予約注文数は相当な数に上っている。もしGoogleがNexus 7で成功すれば、Appleにとっては、2011年10月に死去した共同創業者のSteve Jobs会長が否定した7インチモデルの投入に踏み切らざるを得ないプレッシャーが高まってくるだろう。
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