人材育成については人事部を当てにできない。一方で、開発部門は忙しすぎて育成に割く時間がない――。この2つの問題を解決する方法として注目されているのが、開発部門の直下に人材育成機能を置くことです。
前回、マーケティング部の松田課長は、開発部の田中課長に「人事部の“素人化”は、うちの会社だけではない」と話しました。人事部の“素人化”とは、一体どういうことでしょうか?人事部に技術畑出身者がいないことは問題ですが、人事の仕事が本当に素人化しているとしたら、それもまた大きな問題です。
ここ数年、技術分野に限って言えば、人材育成機能を人事部から切り離し、開発部門の中に人材育成部門を設置する会社が増えています。今回は、昨今の人事部が置かれている状況を理解するとともに、開発部門と人事部門で連携しながら若手エンジニアの育成に取り組む会社を見てみましょう。
人事部の仕事は、採用、給与・賞与の計算、教育・育成、人事評価、福利厚生などです。これは昔も今も変わりません。
20年前に比べ、人事部の業務として増えたものには、まず、ワークライフバランスや人材のダイバーシティ(多様性)に関する取り組みが挙げられます。メンタルヘルスに関わる業務は昔からありましたが、最近ではずいぶんと増えているようです。また、ここ何年かの傾向として“グローバル化”があり、語学研修に力を入れているところもあります。これらを除けば、人事業務そのものが極端に変わったことはありません。
では、何が原因で人事部の“素人化”が進んでしまったのでしょうか?
最も大きな理由は、企業を取り巻く環境の変化が速すぎて、何を行うにも短期間で結果が求められるようになったからです。皆さんも、上司から二言目には「ROI(Return on Investment:投資対効果)はどうか」と聞かれることはありませんか? 短期間で成果を問われることが多いのではないでしょうか。これと同じことが、人事部でも起きているのです。
個人差はあれど、人材育成には時間がかかります。素晴らしい研修を受けたからと言って、すぐにその効果が表れるわけではありません。現場で経験を積むことが必要なので、効果が出るまでにはそれなりの時間がかかるのです。
したがって、本来、人にかかるお金は中長期的な“投資”であり、短期的な“費用”ではないわけです。
研修では、“研修を行った結果、参加者がどのような成果を出すようになったか”を問う必要があります。つまり、人事部の研修担当者の仕事を評価するためには、研修の効果がどのように職場で発揮されているのかを継続的にウオッチしなければなりません。ところが多くの会社では、人事部の研修担当者に対する評価は、研修の効果ではなく、研修を行ったという事実だけで決まります。その上、研修そのものは社外の研修会社に依頼することも少なくありません。これらを整理すると、人材育成に対する人事部の取り組みについては、以下のようなことが言えるのではないでしょうか。
なんだかガッカリしてしまいますが、「うちの会社でもあるある!」と思われた方もいるのではないでしょうか?
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