2012年11月、英国ブレッチリーパークにあるThe National Museum of Computing(TNMOC)で、「Harwell Dekatron」を再起動する試みが行われた。このHarwell Dekatronは、1951年に製造された世界最古のコンピュータである。TNMOCは、3年間もの時間をかけ、このHarwell Dekatronをよみがえらせることに成功した。
「Harwell Dekatron」は、「WITCH」とも呼ばれた世界最古のコンピュータ(電子計算機)である。2012年11月、英国ブレッチリーパークにあるThe National Museum of Computing(TNMOC)で、このHarwell Dekatronを再起動する試みが行われた。
高さ2m、重さ2.5トンのこのコンピュータは1951年に開発されたものだ。828個の計数放電管(Dekatron)と480個のリレーのほか、多数の紙テープ読み取り装置を備えている。当然、既に役目を終えていたのだが、3年にわたる復旧プロジェクトを経て、再起動の準備が整えられた。
TNMOCの理事であるKevin Murrell氏は、「このHarwell Dekatronは、1951年に世界に存在したと思われる十数台のうちの1つだ。以降、その十数台が再利用されたり、廃棄されたりする中、この1台だけは常に運良く危機を免れ、完全なまま生き残った。TNMOCは、第2次世界大戦のときに使われた世界初のセミプログラマブル電子計算機『Colossus』のレプリカ開発を行ったことがあるが、Harwell Dekatronの再起動は、当時のものをそのまま稼働させるという点で大きく異なる」と述べている。
Harwell Dekatronは開発当初、英オックスフォードシャー州ハーウェル近郊にあった原子力研究開発施設「Atomic Energy Research Establishment(AERE)」で使用されていた。ガスを封入した828個の計数放電管は、ネオン光を発しながら設定された周波数で回転し、週に80時間、計算を行っていた。計算の結果は紙テープの上に印刷された。
1957年、Harwell DekatronはAEREでは不用なものとなった。そこでコンペが開催され、継続使用に向けて最高の条件を提示した教育機関に提供されることになった。
このコンペで優勝した英ウェストミッドランズ州のWolverhampton and Staffordshire Technical Collegeは、Harwell Dekatronの名称を「WITCH(Wolverhampton Instrument for Teaching Computation from Harwell)」に変更し、1973年までコンピュータ教育に使用した。
1973年、WITCHは、「世界で最も耐久性のあるコンピュータ」としてギネスに認定された。その後、再び使用されなくなったWITCHは、今度は英国のバーミンガム科学工業博物館に寄贈される。WITCHは同博物館が1997年に閉館した際、倉庫にしまわれたが、2009年にTNMOCによって発見された。そして、WITCHを復旧させたいというTNMOCの申し出が認められ、WITCHはTNMOCに運ばれることになったのである。
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