半導体製造技術のロードマップでは、193nmリソグラフィに限界が来たら、157nmフォトリソグラフィへと移行するはずだった。しかし、実際に普及したのは193nmの液浸リソグラフィであった。次の技術として名前が挙がるのはEUVだが、「この技術が実際に商業用途で利用されるかどうかは定かではない」と指摘する声がある。
半導体製造技術のロードマップでは、193nmリソグラフィ(波長が193nmのレーザーを使用したリソグラフィ技術)に限界が来たら、157nmフォトリソグラフィへと移行するはずだった。
Texas Instruments(TI)でフロントエンドプロセッシング担当マネージャを務めるJim Blatchford氏は、かつて、最先端の157nmフォトリソグラフィに関する交渉をまとめた経験がある。しかし、同氏は、当時まだ実証されていなかったこの技術について不安を抱いていた。そのため、SPIE(国際光工学会)が開催した『SPIE 2004』では、157nmリソグラフィに関するセッションの会場へと足を運んだ。ところが、そのセッションの会場は空席ばかりだった。その日は雨が降っており、通常ならば聴衆の喧騒でかき消されるはずの雨音が、寂しげにポツポツと響いていた。157nmリソグラフィにいったい何が起きたのだろうか。
このような状況に陥った原因はすぐに判明した。聴衆のほとんどが、193nm液浸リソグラフィのセッションに押し掛けていたのだ。その会場では、発表者が来場者に向けて、「リスクを抱えて157nmに進む必要はない。ウエハーとレンズの間を水で浸せば、水の屈折率(1.44)を利用することで193nmリソグラフィの解像度を高めることができる。より屈折率が大きい液体を用いれば、さらなる改善を図ることも可能だ」と説明していた。
Blatchford氏は、「液浸リソグラフィは、驚くほどの速さで普及した。実用的な技術であることが証明された途端、多くの企業がこぞって採用したからだ」と述べている。
液浸リソグラフィの普及がこれほど急激に進んだのは、「液浸鏡検(Immersion Microscopy)」という実証済みの原理に基づく技術だったからだ。液浸鏡検の歴史は、英国の科学者であるRobert Hooke氏がその存在を予測した1600年代にまでさかのぼる。1800年代には、イタリアの天文学者であり光学研究者でもあるGiovanni Battista Amici氏がデモを披露し、1900年代にはこれに関する理論が確立された。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.