液浸リソグラフィの技術は、「光は液体媒体との境界面で屈折する」という原理に基づいている。例えば、水を入れたグラスで屈折が生じるのと同じことである。この現象により、顕微鏡で液浸レンズを使用した場合、物体を拡大して見ることができる。同様に、リソグラフィ装置において液体に浸されたレンズに光を通過させると、液体の屈折率に応じて装置の開口数が拡大する。現在広く知られている手法は、この液浸リソグラフィにマルチパターニングを組み合わせたものである。マルチパターニングでは、マスクを分割して複数回の露光を行うことにより解像度を高める。液浸リソグラフィとマルチパターニングを組み合わせることにより、一般的な193nmリソグラフィの解像度を32nmプロセスに適用できるレベルまで高めることができる。さらに高度なマルチパターニングや、屈折率の高い液体を用いることで、193nmリソグラフィをさらに微細なプロセスで利用できる可能性もある。
Blatchford氏は、「米Intelは、既にトリプルパターニング技術を用いることで32nm世代のプロセス技術を実現している。また、マルチパターニングを採用すれば14nmプロセスの実現も可能だと多くの技術者が主張している。加えて、『ピッチダブリング』の技術を利用すれば、液浸リソグラフィで10nmプロセスを実現するのも夢ではない」と述べている。
一方、EUV(極端紫外線)リソグラフィ技術は、現在もまだ開発中の段階にある。このEUVリソグラフィについては、多くの半導体メーカーが、実用化されればすぐに移行を進めるという考えを明らかにしている。しかし、いくつかの半導体メーカーは別の見解を示している。それは、より高い屈折率の液体を使う液浸リソグラフィやマルチパターニングなどを193nmリソグラフィと組み合わせることにより、ITRS(国際半導体技術ロードマップ)で最終点とされている8nmプロセスを実現できる可能性があるというものだ。
Blatchford氏は、「現行のロードマップの最終点を超える微細化を実現可能な画期的なアーキテクチャを開発できるかどうかは分からない。だが、Intelのように『たとえEUVを実現できなかったとしても、液浸リソグラフィによって既存のロードマップの最終点に到達することは可能だ』と公言しているメーカーも存在する」と述べている。
ニコンやキヤノン、オランダのASMLは、過去10年間にわたり、EUVの実現に向けて全力を尽くしてきた。波長がわずか10nmの光を用いることにより、数個の分子の幅に相当する5nm以降のプロセスを理論上は実現できるとされている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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