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球状セルや有機薄膜で実現、光を透過する「シースルー太陽電池」国際太陽電池展 リポート(1/2 ページ)

「第6回 国際太陽電池展(PV EXPO 2013)」では、変換効率を高めた太陽電池セル/モジュールだけでなく、球状太陽電池セルや有機薄膜太陽電池など、光を透過する「シースルー太陽電池」を実現する技術に注目が集まった。

» 2013年03月08日 09時00分 公開
[馬本隆綱,EE Times Japan]
「PV EXPO 2013」の会場風景

 太陽電池に関する材料や装置、セルモジュールなどの新技術、新製品が一堂に集まる「第6回 国際太陽電池展(PV EXPO 2013)」が2013年2月27日〜3月1日、東京ビッグサイトで開催された。PV EXPO 2013は、8つの展示会で構成される「スマートエネルギーWeek 2013」の中核的な存在である。

変換効率向上とコストダウンの一方で……

「PV EXPO 2013」の会場風景

 太陽電池は、光エネルギーを直接電力に変換することができるデバイス/装置である。光を吸収する層の材料などによっていくつかの種類に分類される。現在主流となっているのがシリコン(ケイ素)をベースとしたもので、単結晶や多結晶などの結晶系とアモルファス系がある。また、結晶シリコンとアモルファスシリコンを積層したハイブリッド型もある。こうした中で、変換効率の向上は永遠の開発テーマである。併せて、さらなるコストダウンも求められている。その一方で、従来の太陽電池とは異なる新技術として、太陽光のエネルギーで発電するにもかかわらず、光を透過する「シースルー太陽電池」も来場者の注目を集めていた。本稿では、このシースルー太陽電池を実現可能な技術をはじめ、PV EXPO 2013で注目を集めていた展示を紹介しよう。

球状セルで集光能力は3倍

 スフェラーパワーは、球状の太陽電池セルとその応用技術を提案した。試作した球状太陽電池セルの直径は1.2mmで、その上下に電極を設けている。多数の球状太陽電池セルを2枚のガラス基板などで挟み込み、太陽電池モジュールを構成している。「当社の太陽電池セルは受光面が球状のため、あらゆる方向からの光を効率よく取り込むことができる。一般的な平板型の太陽電池セルに比べて、集光能力は約3倍となる」(説明員)という。1日を通した積算発電量についても、集光できる角度が広いことから、平板型の太陽電池セルの2倍近くに達する。

球状の太陽電池セルは、平板型に比べて光を受け取る角度が広く、1日の発電量も増える。曇天や高緯度地域などでもその効果が確認されているという。

 球状太陽電池セルは、平板型で黒色の一般的な太陽電池とは異なり、入射光を全て遮らない。このため、光透過度の高いシースルー太陽電池を作成することもできる。同社は、ビルのガラス壁面や高速道路などの防音側壁といった用途への適用を想定している。これらの他、自動車向けにも、軽量で曲面にも対応できるFRP(繊維強化プラスチック)構造体と球状太陽電池セルを一体成型したパネルも開発している。

写真上側の部分に球状太陽電池セルを用いて試作した窓ガラスがはめ込まれている(クリックで拡大)

有機薄膜でフレキシブルかつシースルーに

 一般的な太陽電池が、シリコンや無機化合物材料を用いるのに対し、光吸収層(光電変換層)に有機化合物を用いるのが有機薄膜太陽電池である。製法が比較的簡便なことから生産コストを抑えられる可能性が高く、形状の柔軟性にも優れているといった特徴がある。有機系の太陽電池としては、導電性ポリマーやフラーレン(炭素の同素体の一種)を組み合わせた有機薄膜半導体を用いる「有機薄膜太陽電池」、有機色素を用いて光起電力を発生させる「色素増感太陽電池」などがある。

 伊藤電子工業は、山形大学との共同研究による成果として、有機薄膜を使った太陽電池(OPV:Organic Photovoltaics)パネルの試作品を展示した。有機薄膜であるため、ガラス基板だけでなく、フレキシブルなフィルム基板なども利用でき、半透明化や薄型・軽量化が容易なことが特徴である。例えば、「ガラス基板では厚みが1.5mmあるが、フィルム基板であれば厚みを0.1mmと薄くできる。曲面などの用途にも対応することができるため、新たな用途開拓の可能性が広がる」(説明員)という。つまり、大面積化が容易で曲面などへの対応も可能なことから用途の範囲が広がり、自動車のサンルーフなどにも組み込みが可能となる。

伊藤電子工業のOPVパネル 伊藤電子工業のOPVパネル(クリックで拡大)

 同社が試作/展示した1.2cm2の素子6個を直列に接続したOPVパネルの出力は、太陽光の下で21.6mW、室内灯の下では4.32μWである。これ以外にもフレキシブルOPVパネル、透明OPVパネルなどの開発品を展示した。OPVパネルの実用化については3年後の2016年を目標としている。当面の課題として同社は、「透明でフレキシブルな基板を使った場合でも、OPVパネルの変換効率を最低でも3%まで高めたい。そして製品寿命は10年以上を目指す」(説明員)という。

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