新日本無線が光学式の位置検出システム「オプトパス(Opt-Pass)」を発表。デジカメのオートフォーカスやズームの位置検出で主流のMRセンサー方式に比べ、“磁界の影響なし”“ギャップ変動が少ない”“高精度検出”といったメリットを持つ。
新日本無線は2013年3月14日、光学式の位置検出システム「オプトパス(Opt-Pass)」を発表した。デジタルカメラなど光学機器のオートフォーカスやズーム機構で普及している磁気方式での位置検出システムの置き換えを狙う。
デジタルカメラや監視カメラなど光学機器では、オートフォーカスやズーム動作時のレンズ位置検出にMR(磁気抵抗)センサーを使った磁気方式の位置検出システムが主流となっている。
オプトパスは高出力の赤外LEDとSi(シリコン)受光素子を組み合わせた反射型センサー「NJL9101R」と、専用のストライプミラーデバイス「NJL9600シリーズ」で構成される。反射型センサーから3つの正弦波出力を演算処理することで、高精度かつ高分解能での位置検出が可能になるという。検出精度もMRセンサーが+1.9〜−3.4μmなのに対してオプトパスは+1.4〜−3.3μmとほぼ同等の性能を確保した。
近年のデジタルカメラは、ミラーレス機をはじめとするレンズ交換型カメラや高級コンパクト機などイメージセンサーの大きなデジカメの市場が拡大しており、イメージセンサーの大型化に伴ってレンズなど光学系も大型化している。レンズを動かすのにより大きな駆動トルクが必要なことからモーターの大型化も進んでいくとみられており、モーターからの磁界の影響が今後のデジカメ設計の課題となっていた。
同社執行役員 半導体販売事業部長の村田隆明氏は「オプトパスはMRセンサーを置き換えるもので他社ではまだ実現していない製品。従来のデジタルカメラに採用されている磁気を使ったMRセンサーでの位置検出システムでは、レンズを動かす時に使うモーターの磁界の影響(磁気かぶり)を受けるため、MRセンサーの設置位置に制約があった。オプトパスは磁気を使わないので近くにモーターがあってもまったく問題ない」と、光学式による位置検出システムの優位性を語る。
また、磁気方式ではギャップ(すき間)精度が求められるが、光学式はすき間変動による出力変動が磁気方式に比べて約1/20と少ないため、すき間調整など精度を確保するための工程が簡略化できるのも特徴だ。
「ヨー(Yaw)方向の変動による出力変動も少ないため、センサーの取り付け・調整が容易になる。MRセンサーは組み付けの精度が求められるため、調整などの作業がコストアップにつながっていた。また、磁場解析も必要なくなるので結果としてコストダウンにつながる」(同社半導体販売事業部 第二商品企画部 プロダクトマネージャー ASSP 小出保彦氏)。
位置情報は基準波0度の他、90度/180度と位相の異なった3つの正弦波で処理できるため、高精度の検出が可能になるという。
フォトリフレクタ(反射型)の光学方式では、赤外LEDによる照射の際にMRセンサーに比べて多めの電流を流さなくてはいけないため、消費電力性能ではMRセンサーが有利な他、MRセンサーから置き換えた場合にプロセッサ処理などバックエンド側でのシステム変更が必要になる。「ただ、これらデメリットを考慮しても“磁界の影響なし”“ギャップ変動が少ない”“高精度検出”といった優位性へのニーズは高いとみている。特にモーターの磁界の影響を気にしなくていいのは、デザイン性の面でも非常に有利。デジカメのデザインが劇的に変わるかもしれない。MRセンサーからの置き換えのメリットは大きい」(小出氏)。
2012年から国内外のデジタルカメラメーカーで試験評価を実施し、高評価を得ているという。2013年3月からサンプルの配布を開始し、同年6月から月産10万個の本格生産を開始する。サンプル価格は500円。同社によると、オプトパスを採用したデジカメは2013年7月ごろから市場に登場するという。
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