台湾の大学が、無線で操作できる体内埋め込み型の医療用機器を開発した。この機器は、痛みを感じる箇所の神経に電気刺激を与えるもので、患者の背骨の付け根に埋め込む。台湾当局から認証が得られれば、臨床実験に入る予定だ。
台湾は、医療用電子機器の研究開発に力を入れている。National Taiwan University(NTU)のキャンパス内にあるNational Taiwan Hospital(NTH)を拠点に、着々と開発を進めているようだ。
NTHでは、NTUで開発した医療用電子機器の実証実験や各種臨床試験が行われてきた。既に、さまざまな最先端の医療用診断機器の優れた性能が実証されている。特に、心電図センサーをはじめとする無線センサー群は注目に値する。
このセンサー群の開発を手掛けたのは、主席治験責任医師であるShey-Shi Lu氏だ。センサー群は、医療スタッフによって24時間体制でモニタリングされていて、あらゆる機種のスマートフォンからアクセスできる。そのため、スマートフォンを介して医師が患者の心臓の状態を確認したり、患者の家族が投薬の管理(特に患者が高齢者の場合)を行ったりすることも可能だ。
下の図は、National Taiwan University(NTU)が開発した、埋め込み型医療機器に搭載されているSoCの概念図である。この埋め込み型医療機器は、痛みを抑える目的で使われる。患者の体外から、RFを介してSoCのマイコンを駆動/制御するもので、鎮痛薬を飲まなくても即座に痛みを抑えることができる上に、副作用もないという。
この埋め込み型医療機器は、痛みを感じている場所の神経に電気刺激を与える。これにより、慢性的な痛みを治療できるという。医療機器は、患者の背骨の付け根に埋め込み、スマートフォンほどの大きさの携帯型アクティベータを使って無線で操作する。患者が痛みを感じたときにアクティベータのボタンを押せば、電気刺激が与えられ、痛みが和らぐ仕組みだ。
Lu氏は、「一般にこのような治療を行う場合は、外科手術によって神経を露出させて電気刺激を与えている。鎮痛の効果が続くのは数カ月間で、その後に同じ手術を行う必要がある。今回開発した埋め込み型の機器を使えば、患者は痛みを感じたときに、手術の場合と同じような治療を自分で施すことができる」と述べている。
この埋め込み型医療機器は電池を使用しないため、患者の体内に半永久的に埋め込んだままにできる。現在、患者の体が拒否反応を起こさないようにするための処理を行っているところだという。台湾当局から承認が下りれば、NTHで臨床試験を開始する予定だ。最終的には、台湾の医療機器メーカーに同技術のライセンスを供与し、その後世界各国の医療機器市場に進出することを目指すという。
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