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海外での打ち合わせを乗り切る、「英語に愛されないエンジニア」のための最終奥義「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論(19)(3/4 ページ)

» 2013年06月14日 00時00分 公開
[江端智一EE Times Japan]

【最終奥義その6:確認作業を繰り返す】

 相手から入る修正と、それに対する確認作業を何度も繰り返し、「相手の主張」を正しく理解しましょう。

 フィードバックを繰り返し、適宜修正を行います。こちらからは、「とんちんかん」な内容であることを承知の上で、確認作業を行います。この段階で、相手は間違いなく、あなたにあきれることでしょう。もしかしたら、あなたに腹を立てるかもしれません。なぜなら、これまで相手が一生懸命説明してきた内容や議論が、何の役にも立っていなかったことに気付くからです。

 しかし、この場合、相手がどう思っていようがそれは問題ではありません。誰に何と思われようとも、私たちには日本に持ち帰る「報告」が必要なのです。

【最終奥義その7:理解してから質問する】

 上記の手続きを経て相手の主張の理解に至ってから、こちらからの質問を発動しましょう。

 このような質問は、完璧に相手を怒らせるかもしれません。なにしろ、完全に二度手間をかけさせていますから。

 しかし、この卑劣なやり方は、私たちにはメリットがあります。なぜなら、議論の英語がさっぱり分からないまでも、一度は聞いている話だからです。この段階で、打ち合わせの話が自分の頭の中でつながってくることもあります(つながってこないことも多いですが)。

 また、結論が出尽くしてからの質問ですので、議論が発散することもなく、質問の範囲を小さくとどめることができるというメリットもあります。

「防御」から「攻撃」へ

 さて、この段階で質疑応答そのものは完了しました。

 ここから、ディフェンス(防御)に徹していたあなたが、最後の最後でオフェンス(攻撃)に転じることになります。

 「英語に愛されないエンジニア」が唯一、英語の打ち合わせにおいてイニチアティブを取る、最後の最後の画面です。「詰め」、すなわち「最終確認(Final Confirmation)」と言われるものです。

【最終奥義その8:ホワイトボードに板書する】

 あなたが確認した事項を「ホワイトボード」に板書して、あなたの言葉で説明しましょう。

 この場面だけは、あなたが仕切らなければなりません。相手に「最終確認(Final Confirmation)」を任せたら、それは「最終確認」にはならないからです。なぜなら、私たちは、その「最終確認」の内容を理解できるだけの英語の能力がないからです。

 この「最終確認」だけは、あなたが自分で書いた(拙い)英文で、あなたの(貧しい)ボキャブラリで行う必要があるのです。

 最終確認は、「I would like to confirm that……(では、確認させていただきます)」というフレーズで始めます。

 最終奥義1〜7であなたが作った「最終確認事項」を、――いいですか、必ず「ホワイトボードに板書」して全員に示しながら、貧しいボキャブラリの拙い英語(私の場合、ここに「汚い文字」が加わります)で説明してください。

 「日本語英語」あるいは「カタカナ英語」と言われるもので、大いに結構です。板書の内容が間違っていれば、必ず誰かが修正してくれるはずです。こうして記載されたホワイトボードの内容は、そのまま会社に提出する「報告書の内容」として完成します。

【最終奥義その9:担当者を明らかにする】

 板書に記載した確認事項のフレーズの最後に、担当者の名前と締切日を記載しましょう。

 担当者を明らかにしておくことは、大変重要です。気が付いたら、全ての仕事が全部あなたに押し付けられていた、などということは普通に発生します。前回お話した通り、「楽して成果を得たい」のは世界中の誰にとっても共通の願いであるからです。

 多分、この段階ですべての担当者の欄には「あなたの名前」が入っていると思います。しかし、あなたは「不公平だ」などと叫ぶ必要はないのです。「こんな内容を、どうやって上司に報告したらよいか教えてくれませんか?」と疑問形で尋ねるのがよいでしょう。もちろん、言外の意味は「オメーら、『協業』の言葉の意味、分かって使ってんだろーな」という、遠回しな嫌味です。

 しかしですね、相手も「本気で協業やる気がない」のであれば、仕事の全部をあなたに押し付けてきます。間違いありません。

 それならば、全部あなた一人でやってしまうというのも一興でしょう。会社の糧にはならなくても、あなたの糧にはなります。めったにできない仕事ができるわけですし、しかも「失敗O.K.」というお墨付きだと思えば、あんまり腹も立ちません。

 以上、9つの最終奥義を伝授しました。

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