サムスン電子は、アップルの音声アシスタント機能「Siri」と同様のシステム「SAMI」のデモを披露した。SAMIは、クラウド内に存在するあらゆる種類のセンサーデータから情報を収集し、ユーザーに“アドバイス”することもできるという。
2013年11月7日〜8日に、米国カリフォルニア州ナパで「MEMS Executive Congress US」が開催された。Samsung Electronicsが同州メンロパークに置くOpen Innovation Center(OIC)でバイスプレジデント兼イノベーション担当フェローを務めるLuc Julia氏は、同イベントで、Appleの音声アシスタント技術「Siri」によく似たシステムである「SAMI(Samsung Architecture for Multimodal Interactions)」のデモを披露した。
SAMIは、Samsungのモノのインターネット(IoT)戦略において中核を成すシステムだという。Julia氏はかつて、AppleでSiriの担当ディレクタを務めた経歴を持ち、現在はOICで人工知能システム開発の次なる段階に向けた取り組みを進めている。
Julia氏は、OICのSAMI開発担当チームの責任者を務める。SAMIは、同氏がAppleに勤務していた時に開発を手掛けたSiriと同様の対話型人工知能である。しかしSAMIは、あらゆる種類のセンサーデータをクラウドから収集することが可能だという点で、Siriを上回る性能を実現できるという。
Samsungのエコシステムのパートナーは、オープンシステムであるSAMIを利用することにより、最初にデータに関する詳細な分析を行ってから、ユーザーに向けてスマートなアドバイスを提供できるようになる。同社のパートナーの中には、Samsungが促進に向けて用意した1億米ドル規模の基金から、資金提供を受けている企業もあるという。
Julia氏は、「IoTでは、データを識別して収集し、それをクラウドに送信することが全てだ。クラウド内にデータが存在しさえすれば、ユーザーにデータを送り、情報を提供できる」と述べる。同氏によると、「情報を識別して収集する段階のデータはいわゆる“ビッグデータ”であり、機械学習機能や分析エンジンなどによって、ユーザーに送り返すデータは“スモールデータ”である。スモールデータは、個々のユーザーの生活そのものに直接関連するアドバイスとして提供される」という。
Samsungは、メンロパークをはじめ、世界各国の27拠点にOICを置いている。メンロパークOICでは数々のプロジェクトが進められていて、SAMIはその中の1つにすぎないという。メンロパークOICは、約48社の企業と共同で、ヘルスケアやスマートホーム、スマートカーなどに向けた革新的なセンサーやアクチュエータを提供する他、SAMIのようなプロジェクトに向けたクラウドベースの中枢機能の開発を手掛けている。
またSamsungは、1億米ドルの促進基金を用意し、新興企業に向けて10万〜200万米ドル規模の初期投資を行っているという。
Julia氏は、2012年にAppleを退社している。同氏によると、IoT機器の数は現在約200億台だが、2020年までには1兆5000億台にまで増大する見込みだという。同氏は、このような成長をけん引する要因として、「スマートフォンの爆発的な普及」を挙げる。これによって、スマートフォンに搭載されているセンサーだけでなく、IoT機器に搭載されるセンサーも爆発的に増加し、さらに身体に装着可能なウェアラブル機器などにも搭載されるようになるためだとしている。
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