位置情報の精度を向上できるとして、中国の衛星測位システム「北斗」が注目を集めている。モバイル端末向けのプロセッサや通信チップを提供するクアルコムとブロードコムも、北斗に対応する製品の開発をめぐって火花を散らしている。
クアルコムとブロードコムは、モバイル機器向け位置情報の精度向上を競い合ってきた。こうした中、今後最も重要な鍵となるのが、中国の衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)「北斗(BeiDou)」の存在だ。
クアルコムは2013年11月、同社が開発した位置情報ソリューション「IZat」において、北斗の衛星群から構成される「北斗コンステレーション」をサポートすることを発表した。また、サムスン電子と協業して、北斗をサポート可能な消費者向けスマートフォンを開発する予定であることも明かしている。
一方、ブロードコムも負けじと、2013年12月9日に、最新のGNSSチップ「BCM47531」を発表した。5つの衛星コンステレーションから、同時に位置情報データを生成することが可能だという。
ブロードコムによるとBCM47531は、米国のGPSやロシアのGLONASS、日本のQZSS(準天頂衛星システム)などの他、SBAS(静止衛星型衛星航法補強システム)からも信号を受信できるだけでなく、対応可能な周波数帯の数を増やし、北斗コンステレーション向けのデジタル処理機能も搭載しているという。
ブロードコムでモバイル/ワイヤレス担当プロダクトマーケティングディレクタを務めるMohamed Awad氏は、EE Timesの取材に対し、「中国だけでなく、世界各地においてナビゲーションシステムの精度を高めるためには、北斗のサポートが不可欠だ。特に都市部のように、ビルなどのさまざまな障害物が性能に影響を及ぼすような地域では、その重要性が高い」と述べている。
Awad氏によると、「中国の北斗をはじめ、世界各国の衛星コンステレーションに対応したGNSSチップを開発する目的は、たとえユーザーがパリにいようがサンフランシスコにいようが、ユーザーが世界中のどの場所からでも、精度の高い位置情報を取得できるようするためだ」という。
北斗は2つの衛星コンステレーションで構成されていて、2000年に稼働を開始している。現在のところ、性能が限定された試験機ではあるものの、大規模なグローバルナビゲーションシステムである。
試験機「北斗-1」は、3つの衛星で構成されている。主に中国と近隣諸国のユーザーを対象としているため、対応範囲や用途に限りがある。
第2世代機である「北斗-2」に関しては、現時点では開発途中の段階にある。2020年までに、35個の衛星を利用して世界全域のユーザーをサポートする見込みだ。北斗-2は、2011年12月に稼働を開始し、現在は10個の衛星を使用して中国全域をカバーしている。さらに、2012年末には対応範囲を拡大して、アジア太平洋地域のユーザーもサポート可能になった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.