間もなく幕を閉じようとしている2013年。国内半導体業界の2013年を振り返れば、やはり国内半導体メーカーの象徴といえるルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)の話題は欠かすことはできない。2010年4月の発足以来、“再建”の宿命を背負い続けるルネサスの2013年下半期(7〜12月)を振り返る。
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は、ご存じのように2010年4月に、日本を代表する半導体メーカーNECエレクトロニクスとルネサス テクノロジが合併して誕生した国内最大規模の半導体専業メーカーだ。
しかし、赤字を抱えた2社の合併のため、発足当初から“経営再建”の宿命を背負い続けてきた。2011年3月の東日本大震災での主力工場の被災なども重なり、合併当初に思い描いた経営再建は思うように進まず、2012年末には、政府が約9割出資する官民ファンドの産業革新機構から出資を得ることが決定し、2013年を迎えた。
2013年上半期は、大株主となることが決定した産業革新機構の下、新たな経営再建がスタートし、3千数百人規模の追加リストラ、携帯電話機/モバイル向けSoC(System on Chip)事業からの撤退を決定。さらに、6月には前オムロン会長の作田久男氏が会長兼最高経営責任者(CEO)に就任。外部から新たなトップを招き入れ、これまでとは違ったルネサスとして、再建が加速されるのではという期待感が高まりつつ、2013年を折り返した。
その作田氏が、初めてルネサスのトップとしてメディアの前に登場したのが、2013年8月2日の2014年3月期第1四半期決算説明会だった。
第1四半期決算説明会で注目されたのは、その業績内容よりも、「作田ルネサス」としての新たな再建策がどのようなものかという点だった。特に、再建に向けて大きな課題として残ってきたルネサス山形セミコンダクタ(山形県鶴岡市)の鶴岡工場の処遇に注目が集まった。鶴岡工場は、デジタル家電、ゲーム機など市況悪化が続く民生機器向けシステムLSIの生産拠点で、ルネサスの赤字体質の要因の1つとして挙げられてきた工場だ。
その鶴岡工場に関して、ルネサスは2012年8月時点で「1年以内に売却」との方針を示していたが、売却先探しは難航。「鶴岡工場閉鎖」との報道も飛び交う中で、第1四半期決算説明会を迎えた。
第1四半期決算説明会では、事前の報道通り、鶴岡工場は「2〜3年以内に集約予定」とし、それまでの「売却」方針から、売却先が見つからない場合は「閉鎖」という一歩踏み込んだ方針へと切り替えた。さらに、鶴岡工場だけでなく、2012年8月時点では、存続方針を示していたルネサス関西セミコンダクタの滋賀工場(滋賀県大津市)8インチ(200mm)ウエハーラインと、甲府工場(山梨県甲斐市)の8インチウエハーラインに関しても、「1〜3年以内に集約」と閉鎖方針へと切り替え、資産圧縮を一層進めることを明確化した。
追加の工場再編策を発表した作田氏は、「まだ人・モノが多い。大げさに言うと、(ルネサス テクノロジとNECエレクトロニクスの)トータルの売上高が1兆8000億円だったころと比べて、今の売上高レベルで考えれば3分の1くらいまでに減らさなければならない」と追加のリストラ、工場再編が必要な点を示唆。これまでの再建策が実り、2010年4月の合併当初と比べて、損益分岐点を約3700億円下げ、固定費も約2100億円圧縮している点も明かしたが、「それなりの努力はしているが、それ以上に売上高が落ち込んでいるので利益を出せない。対応力のあるしぶとい企業になるには、固定費を圧縮し続けなければならない」と言い切り、作田氏のリーダーシップの下、再建が加速することへの期待が膨らんだ。
そして、迎えた2013年9月は、ルネサスにとって1つの節目を迎える月だった。
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