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新時代到来! ヘテロジニアス・コンピューティング最新動向【前編】プロセッサ/マイコン(2/4 ページ)

» 2014年02月06日 14時45分 公開
[本間文EE Times Japan]

ヘテロジニアス・コンピューティング

 CPUだけでなく、本来グラフィックス処理を行うGPU(Graphics Processing Unit)にも汎用演算処理を行わせるヘテロジニアス(Heterogeneous:異種混合な の意)・コンピューティングは、GPUの性能が飛躍的に向上しはじめた2005年頃からGPGPU(General Purpous GPU)や、GPUコンピューティングという形で進化してきた。

 しかしながら、GPUはCPUほど柔軟な演算処理は行えない上、CPUと密接に連係を取る際には、CPUとGPU間のデータ共有がパフォーマンスのボトルネックとなっていた。これは、GPUがCPUが扱うデータを利用する場合、PCI Expressバスを介していったんグラフィックスカード上のメモリにコピーする必要が生じるからだ。しかし、グラフィックスカードの搭載メモリはシステムメモリに比べて格段に少なく、かつPCI Expressバス転送にかかるレイテンシ(遅延時間)も生じるため、演算処理と依存関係があるデータは、GPU側で処理すると効率が悪くなってしまう欠点があった。そこで、AMDは、GPUをCPUに統合したAPUを主力製品に位置付け、CPUとGPUが密接に連係が取れるアーキテクチャ開発や、ソフトウェア開発環境の整備などを進めてきた。

GPUの性能が飛躍的に向上しはじめた2004、5年頃から、GPGPUなどGPUを汎用並列処理に利用する動きが活発化した (クリックで拡大)
左=現在の一般的なアプリケーションのGPU利用では、GPUで処理させるデータをシステムメモリからGPU側のメモリにコピーするなど、煩雑な処理が必要となる。右=CPUとGPUを1つのチップに収めたAPUやSoCでも、現在はCPUとGPUがそれぞれ個別に仮想メモリ空間と実メモリ空間を持たなければならず、CPUとGPUを連係させるためには、これらのメモリ空間でデータコピーや整合性のチェックなどが必要となる (クリックで拡大)

 AMDは、旧ATI Technologies買収を機に、2006年からCPUとGPUの統合を図る“Fusion”(フュージョン:融合の意)を進めてきた。それが形になったのが、2011年に市場投入された初代APUのAMD Eシリーズ&Cシリーズの“Brazos”(ブラゾス:開発コードネーム)と、同年6月に市場投入されたAMD Aシリーズ“Llano”(ラノ:開発コードネーム)だ。

 しかし、その主力となるLlanoは従来のCPUコアとGPUコア、ノースブリッジ機能などを統合したにすぎなかった。その一方で、AMDは同年6月にヘテロジニアス・コンピューティング環境整備のために、Fusion Developer Summitを開催し、汎用演算処理性能を高めたGPUアーキテクチャである“GCN”(Graphics Core Next)のアーキテクチャを発表。その翌年の2012年にはCPUコアをBulldozerアーキテクチャベースのPiledriverコアに一新。また、同年6月に開催された第2回AMD Fusion Developer Summitでは、GPU向けに特別なプログラミングを行うのではなく、CPUとGPUの垣根を取り除き、容易にプログラミングが行える環境として「HSA」(Heterogeneous System Architecture)が提唱され、同アーキテクチャの推進団体としてのHSAファウンデーション設立がアナウンスされた。

 それから、約1年半のときを経て、AMDは、KaveriでようやくHSAの実行環境を手に入れたことになる。

AMDにとってKaveriは、2006年からスタートしたCPUとGPUを統合する“Fusion”の最初のゴールであり、APUの1つの完成形と位置付けされている (クリックで拡大)
左=AMD最初の主力APU“Llano”は、既存のCPUコアとGPUコアをシリコン統合したに過ぎなかった。右=第2世代APUの“Trinity”とその強化版となった“Richland”では、IOMMU x2が追加され仮想メモリアドレス空間をサポートできるようになった他、CPUーGPU間のデータ帯域も拡大された (クリックで拡大)
左=初のHSA対応APUとなった“Kaveri”では、ハードウェアでCPUとGPUのメモリコヒーレンシが取れるようになるなど、HSAの機能が盛り込まれ、CPUとGPUがより密に連係できるようになった。右=KaveriにおけるHSAのサポート。CPUとGPUがメモリアドレス空間を共有するhUMAなどに対応した (クリックで拡大)

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