PC事業の売却とテレビ事業の分社化を発表したソニー。同社が次に注力する事業には注目が集まるところだ。そのヒントは、「2014 International CES」における平井一夫氏の基調講演にあった。
ソニーは、PC事業を売却して、テレビ事業を分社化するとともに、従業員を5000人削減することを発表した。また、2014年3月31日を末日とする第4四半期の決算について、2013年10月の時点では300億円の黒字になるとみていたが、一転して1100億円の赤字になる見込みであることを明らかにした(関連記事:ソニー、PC事業を売却してもテレビ事業を分社化してもなお、見えない光)。
ソニーはかつて、世界市場の中で日本企業を先導する役割を担ってきたが、今や同社に関する明るい話題を見つけ出すことは難しい。
PC事業とテレビ事業を手放すことで、ソニーにとって大きな負担が生じる。5000人の人員削減に伴う費用として700億円を見込んでいるという。しかし、これら2つの事業部門を引き続き維持したとしても、同社にとって役立つことはない。もしソニーが、PC事業とテレビ事業で生き残りを図ろうともがけば、さらに赤字が続くことになるだろう。
ソニーは以前に報じられた通り、「VAIO」ブランドとして運営しているPC事業を、日本産業パートナーズ(JIP)に譲渡する予定だ(関連記事:ソニー、PC事業売却を正式発表)。JIPは、Bain Capitalおよびみずほ証券からのバックアップを受けたプライベートエクイティ(PE)企業である。また、テレビ事業部門については分社し、子会社化として運営するとしているが、最終的には売却する可能性もあるという。
多くの投資家やアナリストたちは、ソニーの平井一夫社長の決断は正しかったと評価しているようだ。
しかし、筆者だけでなく、多くのソニー支持者にとって不明瞭さが残る点がある。それは、「これまでのソニーについては良く知っているが、今後のソニーはどのようになるのか」という疑問だ。
ソニーが今後、スマートフォンとゲーム機器をベースに経営基盤を再構築していくとは考えにくい。
同社のスマートフォンおよびゲーム機事業は、2013年12月31日を末日とする第3四半期において、業績を伸ばしている。同社の報告によると、「スマートフォンの売上高が大幅に増加した他、『プレイステーション4(PS4)』の投入によってゲーム機事業の営業利益も飛躍的に伸びた」という。
しかし、ソニーが今後長期にわたって、スマートフォンとゲーム機だけで成長を維持していくことは可能なのだろうか?
スマートフォンとゲーム機が急速にレガシープラットフォームになりつつある今、平井氏の幸運を祈るしかない。
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