海外赴任というのは、多かれ少なかれ周りの人間を巻き込みます。そして、赴任するのが「英語に愛されないエンジニア」である場合、周りは、巻き込まれるばかりか、赴任する本人を“守る”という使命まで負う可能性もあります。今回は、海外に赴任する「英語に愛されないエンジニア」が、(1)自分自身である、(2)恋人である、(3)夫あるいは妻である、(4)親である、という4つの視点に立って、“守る方法”を検証します。
われわれエンジニアは、エンジニアである以上、どのような形であれ、いずれ国外に追い出される……。いかに立ち向かうか?→「『英語に愛されないエンジニア』」のための新行動論」 連載一覧
長期の海外出張や赴任は、未婚者にとっては千載一遇のチャンスです。
「好きです。結婚して、外国に一緒に来てください」
という告白が可能な状況になるからです。
しかし、「告白される側」にだって事情があるので、そんな簡単にYesともNoとも言えません ―― というか、「バカじゃん?」という答えが返ってくる可能性の方が大きいです。
しかし、それでも「告白する側」にはメリットがあります。
もちろん、“Yes”と言ってもらえれば目的達成。“No”であっても、職場で気まずい思いをすることもなく、海外に逃亡できるのです。「振り逃げ」ならぬ、「振られ逃げ」です。しかも、振られた理由を「海外」にする言い訳もできます。
卒業式の後の告白のようなものですが、どさくさに紛れてプロポーズまで持ち込める分だけ、メリットは大きいです。海外赴任という不幸も、使い方によっては、私益をはかることができるのです。
一方、「告白される側」にとっては、このような申し出はひどく迷惑なものでしょう。自分で培ってきた生活のインフラ(自分の仕事、住居、人間関係)を、一時的であれ放棄することになります。他人の都合で、言葉も通じない国に行かされる不条理に、おいそれと乗れるものではありません。
それに、言葉の問題だけではありません。海外の住居などの生活インフラや、安全、安心、教育、その他の面倒くささを考えれば、海外赴任に巻き込まれる人間としては、「何言ってんの?」という気持ちになるのは当然のことだと思うのです。
さらに、もっと根本的で、本質的な疑問が残っています。
そもそも、あなた、「英語に愛されないエンジニア」じゃなかったっけ?
こんにちは。江端智一です。
今回は、ちょっと趣向を変えまして、「英語に愛されないエンジニア」に巻き込まれる方々に着目してみたいと思います。
といっても、「英語に愛されないエンジニア」の関係者というだけで、いきなり迷惑を被るわけではありません。
問題なのは、この「英語に愛されないエンジニア」とともに、外国に飛ばされる羽目になるときです。つまり、「海外赴任」の場面で、この迷惑はいきなり現実味を帯びてくるわけです。
あなたが、「英語に“愛されている”エンジニア」とともに海外赴任するのであれば、それほど心配しなくても良いかもしれません。あるいは、あなた自身が英語に愛されている人物であれば、当然、何の問題もないでしょう。
問題は、「英語に愛されていないチーム」で海外に赴任する場合です。それはもう、登山を開始する前から遭難が確定している山岳登山チームのようなものです。
「英語に愛されないエンジニア」に巻き込まれるおそれのある人は、「単独で山頂アタックしてきてね。ベースキャンプから見ているよ!」と、明るい声で彼らを見捨てるのも1つの方法です。
しかし、彼らがアタックに失敗し、死んだ魚のような目をして帰国した揚げ句、廃人同様となり、労働力として使いものにならなくなったら、あなたも困ることになるかもしれません。
「英語に愛されないエンジニア」を海外に放置しておくと、面倒なことになる可能性は高いのです。
そこで今回は、「英語に愛されないエンジニアの守り方」について考えてみたいと思います。
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