こうした事例で考えてみますと、「英語に愛されないエンジニアを守る」ための、特別な方法などないようです。海外赴任で、家族が一つになって幸せに過ごせるか、あるいは最悪、家族崩壊に至るかは、単なる「運」のようも思えます。
しかし、
(1)英語に愛されないまま海外の地で生き延びるためには、「“英語に愛されない者たち”が協力して、その時できることを、何も考えずに場当たり的にやっていく」しか方法がない
(2)そのようにして日々を過ごした先には、何かいいことがありそう
ということだけは、いえるような気がします。
さて、長く続いたこの連載も、次回が最終回となります。
私たちは日本に帰国し、仕事の仕上げに取りかかります。いわゆる業務報告です。
会社の命令によって出張してきた以上、報告は客観的かつ具体的に行う必要があります。ただし、次回は、「あなた以外は、誰もその場にいなかった」という事実にスポットを当て、「どんな報告をしたところで、誰にも分かりゃしない」という観点から、報告書の作成または報告会のプレゼンテーションについて論じます。
併せて、十分なサポートを行うことなく私たちを海外に送り込んだ者たちへの、ささやかな報復についても論じたいと思います。
「英語に愛されないエンジニア」の為の新行動論(最終回)「報告編」をお楽しみに。
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江端智一(えばた ともいち) @Tomoichi_Ebata
日本の大手総合電機メーカーの主任研究員。1991年に入社。「サンマとサバ」を2種類のセンサーだけで判別するという電子レンジの食品自動判別アルゴリズムの発明を皮切りに、エンジン制御からネットワーク監視、無線ネットワーク、屋内GPS、鉄道システムまで幅広い分野の研究開発に携わる。
意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関して強いこだわりを持つ。特に熾烈(しれつ)を極めた海外特許庁との戦いにおいて、審査官を交代させるまで戦い抜いて特許査定を奪取した話は、今なお伝説として「本人」が語り継いでいる。共同研究のために赴任した米国での2年間の生活では、会話の1割の単語だけを拾って残りの9割を推測し、相手の言っている内容を理解しないで会話を強行するという希少な能力を獲得し、凱旋帰国。
私生活においては、辛辣(しんらつ)な切り口で語られるエッセイをWebサイト「江端さんのホームページ」で発表し続け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている。また週末には、LANを敷設するために自宅の庭に穴を掘り、侵入検知センサーを設置し、24時間体制のホームセキュリティシステムを構築することを趣味としている。このシステムは現在も拡張を続けており、その完成形態は「本人」も知らない。
本連載の内容は、個人の意見および見解であり、所属する組織を代表したものではありません。
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