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「数字」に落とせば見えてくる!? 時事問題をエンジニア的視点で読み解く世界を「数字」で回してみよう(1)(3/4 ページ)

» 2014年06月05日 09時40分 公開
[江端智一EE Times Japan]

分からないことばかりの世の中

 さて、今度は、私自身の話に移ってみたいと思います。

 私は、この歳になっても分からないことばかりです。

税金 ―― ここ2年連続で、父と母と私の確定申告手続をやっているのですが、生れて初めて自分の収めている税金を数字で把握してがくぜんとしました。「『お上』は、こんなに持っていくのか?」と。そして、所得税と住民税の違いを理解したのは、この連載が決まって勉強を始めてからです

外交 ―― 例えば、2010年でのTPPに関する利益試算では、内閣府、農林水産省、経済産業省が、全部バラバラの計算結果を出して、何を信じていいやらさっぱり分かないことになったことをよく覚えています

予算 ―― 日本の防衛費の比率や内容、公共事業費と社会補償費の違い、国債の総額なのか私は全然知りません。そもそも日本国の歳入や歳出など、全く理解していないです。「財政破綻」という言葉をよく聞きますが、そもそも破綻したら何がどうなるのか全くイメージできていません

領土問題 ―― この問題を解決すると、なにがどうよくなるか理解していません。そして、それは金額に換算するといくらになり、結果として税金が安くなるなどの効果を見込めるものなのかも分かっていません

各政党の財政案 ―― 各党のホームページを見れば書いてあるが、その試算(シミュレーション)結果がどこにもありません。マニュフェストの内容も嘘くさいです。「あれ? その財源、そこで使ったら、さっきの政策の原資はどうするの?」というような記載がゴロゴロあります

 ―― このまま、世の中のほぼ全部を「分からないまま」、私は一生を終えるのかなぁ。そう思うと、なんとも言えない虚無感を感じます。

 その一方で、最近、私が「知っていてよかったなあ」と思える事項は、

原発事故 ―― 原子炉格納容器の水素爆発のニュースと、その後の発電所の正門付近の放射線量の「数字」を聞いた瞬間に、ありったけの飲料水と食料を車に詰め込んで、「自分の家族だけが逃げ出す準備」をした(本当)

少子化 ―― 我が家の娘たちの結婚の可能性と、この100年間くらいの日本の人口と高齢化をパソコンで計算し、その「数字」を見て一人で青冷めた(本当)

というくらいです。

ギョーザセットを“システム”として扱えるか

 ここで私は、はたと考えました。

 ある問題に対して、その「数字の意味」と、その「数字の流れ」がキチンと把握できるのであれば、問題が見えてくるのではないか?

 「数字の意味」と、その「数字の流れ」が理解できた問題は、電子回路、通信装置、ネットワーク、あるいは鉄道、電力、交通のような「システム」と同じ様に取り扱えないか?

 例えば、「ラーメンにはギョーザセットかチャーハンセットか?」というテーゼに対して、これを「ギョーザセットシステム」と「チャーハンセットシステム」として把握することさえできれば、あとは私たちエンジニアのフィールドに持ち込めます。

 私たちエンジニアは、問題をシステム的に把握することによって ―― 例えば、この「ギョーザセットシステム」と「チャーハンセットシステム」を ――、およそ想像し得るあらゆる角度から分類し、比較し、検討し、吟味し、分析し、体系化した上で解体し、統合し、止揚し、脱構築化した後に再構築を試みることが可能となるはずです、理屈の上では。

 そして、ひとたび、問題をシステム的に把握することができれば、「世界を理解するなど造作もない。世界はこの私たちエンジニアの手の中にある」という状況にできるはずです、理屈の上では。

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