最新のEUV(極端紫外線)リソグラフィ装置の予備試験で、40Wの光源を用いて1日当たりウエハー100枚を処理することに成功した。リソグラフィ技術は、EUVでも液浸でも課題は山積している。だが、今回の試験結果は、EUV技術では大きな進展だといえる。
最新のEUV(極端紫外線)リソグラフィ装置が、予備試験において、40Wの光源で1時間当たりウエハー28枚または1日当たりウエハー100枚を処理することに成功したという。大きな進展ではあるが、半導体業界が希望を持って目指している“最大ウエハー200枚/時”という処理スピードの実現にはまだ程遠い状況だ。
ASMLのCTO(最高技術責任者)であるMartin Van den Brink氏は、2014年6月4〜5日にベルギーのブリュッセルで開催された「IMEC Technology Forum」において、同社がここ3カ月間取り組んできた研究成果について発表した。同氏は、「今回開発したEUV装置は、早ければ10nmプロセスの導入が予定されている2016年には実用化できる可能性がある」と述べ、EUVを支持する一部のメーカーに希望を与えた。しかしこれは、最良の場合を想定した見通しであり、まだ多くの課題も残ることから、先行きは不透明だといえる。
約2年後には10nmプロセスが必要になるとみられているが、既存の液浸リソグラフィ技術でそれを実現しようとすると、マルチレイヤーパターニングを要するため、半導体メーカーのコスト負担が増大する。EUVの開発は、こうしたコストを削減するために進められている。しかし、EUVが抱える問題の中でも最も重要なのが、光源が弱いためにスループットが低いという点だ。
Van den Brink氏は、「レンズ開口数を高くすることができれば、いずれはウエハーを100〜200枚/時で処理できるようになるとみている。そうすればその後10年間は、この新しい技術を適用した半導体製造が可能になるだろう」と述べている。
ASMLはもともと、ウエハー約85枚/時で安定的に製造可能なEUV装置を実用化することで、10nmまたは7nmプロセスを実現しようとしていた。しかし最終的には、高い開口数と強い光源、より適したレジストを使って、ウエハー100〜200枚/時で処理可能な装置を提供したいと考えている。これにより、5nmプロセスの実現に向けてコストを約6倍削減することが可能だとみている。
Van den Brink氏は、こうした楽観的な見方をする一方で、ASMLが現在取り組みを進めている、10nm〜5nmプロセスに対応可能な液浸リソグラフィ装置の未来像についても明らかにした。IMECのリソグラフィ技術関連の専門家であるKurt Ronse氏は、「このような装置を10nmプロセスで使用する場合には、マルチレイヤーパターニングが必要になるため、半導体メーカー各社がムーアの法則の曲線から大きく外れていく可能性がある」と述べている。
Ronse氏はIMEC Technology Forumの会場において、「液浸装置では、10nmプロセスでマスク数18、7nmプロセスではマスク数27が必要になるだろう。このため、コストの増加率がそれぞれ35%以上、および21%以上になると見込まれるため、対応は非常に難しいといえる。一方で、ハイブリッド手法を用いれば、液浸装置がマスク数8、EUV装置がマスク数6となるため、7nmプロセスの場合のコスト増加率を約7%に抑えることが可能だ」と述べている。
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