ソニーやSamsung Electronicsなどの実績あるテレビメーカーは、2013年に80インチを超える4Kテレビを3万米ドル台で発売した。現在は、55インチ以下であれば、4000米ドル台で購入できる。2013年中旬には、米国の新興テレビメーカーであるSEIKIから1000米ドル以下の製品も発売されている。
4Kテレビのコモディティ化は信じられないほどのスピードで進んでいる。このことからも、放送市場の次なるヒット商品は3Dテレビではなく、4Kテレビになることは間違いないだろう。3D上映は、「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」のように、注目を集めながらも興行的には振るわなかったものも多い。家庭用3Dテレビも、メガネを装着する面倒さからとても成功とはいえない状況になっている。メガネ不要の新しい方式の3D映像も、あまり普及しそうにない。
これとは対照的に、4K映像は、新しいテレビを購入すること以外にユーザーは面倒なことを一切せずに済む。特定の番組ではなく、ユーザーが視聴するあらゆる番組に適用できることも利点だ。
さらに重要なのは、4Kは放送局にとっても利点があることだ。特にスポーツ番組では、それが分かりやすい。4Kカメラは、1台で試合全体を連続して撮影することができる。例えば、サッカーの試合でボールがあるのとは反対側のフィールドで小競り合いが起こった場合でも、1台のカメラだけで試合とハプニングの両方の様子を視聴者に提供できる。
撮影後に編集などのデータ処理を施して、3840×2160画素の4K映像を各家庭の視聴者に届けるために重要なのが、大容量データの伝送技術や、高性能の圧縮/伸長技術だ。映像機器の設計者は、これらの技術の開発が求められている。
4Kの映像システム設計者にはいくつかの選択肢がある。4K映像信号の圧縮/伸長は、ASICによって行うことができる。だが、設計、コスト、長期的にみた柔軟性という点でみると、FPGAがよりよい選択肢になるだろう。ASSPももう1つのオプションだが、放送機器においてASSPを使うことは、4Kではやや限界だろう。
4K映像信号の圧縮は、1つのFPGAで行うことができる。商用グレードのASSPの場合は4つ必要だ。その上、個々のASSPはSDI(Signal Digital Interface)チップ1個と接続して使わなくてはならない。つまり、全体では8個のチップが必要になるということだ。さらに、グルーロジックとイメージスティッチング(画像の張り合わせ)向けに、少なくとも1個のFPGAと、SDI用のビデオインタフェースチップも必要になる。
加えて、個々のASSPは、それぞれメモリサブシステムが必要だ。この設計は、ボード上にいくつものメモリチップが並ぶことになる。反対に、FPGAを使用した場合は1つのメモリサブシステムだけで済む。このようなシステムの中ではメモリシェアリングが可能なので、本質的により効率的なものになる。
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