理化学研究所(理研)と東京大学は、中性の水を分解して電子を取り出すことができる「人工マンガン触媒」を開発した。今回の研究成果は、中性の水を電子源とした水素あるいは低環境負荷の有機燃料の製造につながると期待されている。
理化学研究所(理研)と東京大学は2014年7月、中性の水を分解して電子を取り出すことができる「人工マンガン触媒」を開発したと発表した。今回の研究成果を用いることで、中性の水を電子源とした水素あるいは低環境負荷の有機燃料の製造につながるとみられている。
今回の研究は、理研の環境資源科学研究センター生体機能触媒研究チームの中村龍平チームリーダーと、山口晃大学院生リサーチ・アソシエイト、東京大学大学院工学系研究科の橋本和仁教授らの共同研究グループによる成果である。
植物など光合成を行う生物が、マンガンを含む酵素(生体マンガン酵素)を利用して自ら電子を獲得し、その電子を用いて二酸化炭素から炭水化物を作り出す機能は知られている。このメカニズムを利用するために開発されたのが人工マンガン触媒である。ところが、これまでの人工マンガン触媒は、強酸や強アルカリ環境でないと効率よく電子を引き抜くことができなかった。
共同研究グループは、これまで解明されてなかった、中性環境(pH=7.5)における生体マンガン酵素と人工マンガン触媒の活性の違いを、電子/プロトン輸送の経路に着目して研究を行ってきた。その結果、水を分解する過程で異なることが分かった。生体マンガン酵素では、電子とプロトンが同時に移動する。これに対して、人工マンガン触媒では電子とプロトンが個別のタイミングで移動することを突き止めた。
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