TDKは、車載情報機器のアプリケーションプロセッサや車載レーダーなどの高周波回路、通信モジュールなどの入出力信号のノイズ対策に用いる3端子貫通フィルタの車載対応品を開発した。2014年12月からサンプル供給を始める。
TDKは2014年7月29日、アプリケーションプロセッサやレーダーなどの高周波回路、通信モジュールなどの入出力信号のノイズ対策に用いる3端子貫通フィルタの車載対応品を開発したと発表した。主に、車載情報機器、車載カメラ、車載レーダーなどの電源ノイズ対策の用途に向ける。2014年12月からサンプル供給を始める。サンプル価格は1個当たり10〜40円。2015年1月から月間2000万個で量産を開始する予定だ。
今回発表した車載対応3端子貫通フィルタは、1608サイズ(1.6×0.8mm)、2012サイズ(2.0×1.25mm)、3216サイズ(3.2×1.6mm)で、総計約50品種をラインアップしている。「競合他社より多くの品種をそろえるとともに、全ての品種で定格電流を1A以上とするなど性能も高めている」(TDK)という。主な仕様は、1608サイズで定格電圧が25〜50V、定格電流が1〜2A、静電容量が22p〜0.1μF。2012サイズで定格電圧が10〜50V、定格電流が1〜4A、静電容量が22p〜1μF。3216サイズで定格電圧が25〜50V、定格電流が2A、静電容量が0.1μ〜1μF。3216サイズの高耐圧品は、定格電圧が100V、定格電流が最大10A、静電容量が0.01μ〜1μFとなっている。使用温度範囲は−55〜125℃である。
これまで同社の3端子貫通フィルタは民生用機器向けが中心だった。今回の車載対応品では、自社内の車載標準プロセスに準拠できるように設計や材料を見直して、自動車業界から求められる高い信頼性を確保した。
一般的に、動作周波数がギガヘルツクラスのプロセッサや無線通信に用いる高周波回路では、入出力信号に含まれているノイズを抑制/除去するために数十個の積層セラミックコンデンサが用いられている。3端子貫通フィルタも、これらの積層セラミックコンデンサと同様にノイズの抑制/除去が主な用途となる。実際に、PCやスマートフォンでは、3端子貫通フィルタが広く利用されている。
積層セラミックコンデンサは、一方の外部電極と接続した内部電極を交互に積層した構造になっている。これに対して、3端子貫通フィルタは、部品両端の外部電極と接続した内部電極と、部品本体の長辺側にある3端子目と接続するグラウンド電極が交互に積層されている点が異なる。
積層セラミックコンデンサでノイズ対策を行う際には、入出力の信号線から分岐したグラウンドとの間に設置する。一方、3端子貫通フィルタは入出力の信号線に対して直列に接続することになる。部品本体の長辺側のグラウンド電極を使い、積層セラミックコンデンサよりも効率よく寄生容量をグラウンドに分散できるので、ノイズ抑制/除去性能の目安となる等価直列インダクタンス(ESL)の大幅な低減が可能である。このため、複数の積層セラミックコンデンサを、1個の3端子貫通フィルタで置き換えられるのだ。
現在、車載情報機器の高性能化によって、搭載するプロセッサの動作周波数もギガヘルツクラスが当たり前になっている。また、車載情報機器に組み込んだ通信モジュールやスマートフォンとの連携などによって自動車を「コネクテッドカー」にする流れも加速している。さらに、普及が加速している自動ブレーキなどの運転支援システムには、車載カメラや車載レーダーなどのセンサーが必要になる。
これらの高周波を用いる車載システムは、現在各社が開発を進めている自動運転車に必須のものだ。このため、高周波アプリケーションのノイズ対策に最適な3端子貫通フィルタの需要が拡大しつつある。
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