富士通とパナソニックは、2014年内に両社のシステムLSI事業を統合して新会社を設立する。ただ、この新会社は、どのようなシステムLSIをどのように製造し、どうやって利益を上げていくか、あまり明らかにされていない。そこで両社に“6つの疑問”を投げかけた。
富士通とパナソニックは2014年7月31日、日本政策銀行(DBJ)からの出資を得つつ、両社のシステムLSI事業を統合し、工場を持たないファブレス型のシステムLSI専業メーカーを2014年内に設立することで正式合意した(関連記事:半導体事業からの完全撤退への布石? 富士通が半導体工場分離を発表)。
この動きは、1つの時代の終わりを意味している。
日本のエレクトロニクス企業は過去10年間、自社の製造施設を所有することにこだわってきた。日本のチップベンダーは、それまでのメモリ一辺倒の事業展開から多様な製品構成の事業展開へと転換を狙う中で、システムLSIを「未来を切り開く鍵」として見なしてきた。
ただ、半導体事業はもはや“聖域”ではなくなった。富士通とパナソニックは過去数年で自社の製造施設のほとんどを手放した。そして、両社はそれぞれのシステムLSI事業を切り離し、統合することになった。
両社が共同で発表したこれまでのプレスリリースでは触れられていない点があり、いくつかの疑問がある。
まず、新会社の委託製造先にIntel(特に14nmプロセス製造において)が含まれるかどうかはうやむやにされている。さらに、新会社が自動車用ICをどれぐらい開発するかも言及されていない。さらに、パナソニックのARMベースのデジタル家電向けシステム・オン・チップ(SoC)プラットフォーム「UniPhier」(ユニフィエ)が、新会社のシステムLSIアーキテクチャの主になるかどうかも明らかにされていない。
そこで、EE Timesでは富士通とパナソニックの日本の広報担当者にこれらの疑問について聞いた。以下にその質問と回答をまとめる。
富士通の半導体事業子会社である富士通セミコンダクターの広報担当者はこの疑問について「分からない」と答えた。それとは対照的に、パナソニックの広報担当者は、「その取り決めがパナソニックのシステムLSI事業部門とIntelの間で交わされたものであることを踏まえると、Intelの技術が新会社に引き継がれるのは当然の成り行きだ」と述べた。
パナソニックのシステムLSI事業本部の岡本吉史事業部長は、インテルと製造契約締結を発表したリリース文(日本時間2014年7月8日発表)の中で、「インテルの協力の下、14nmトライゲート・プロセス技術を採用することにより、次世代SoC製品の性能、電力効率を大幅に向上させる予定」と述べた。
当時、岡本氏は富士通とパナソニックが新たに設立するシステムLSI会社について何も言及しなかったが、今回、新会社に対するパナソニックの議決権がわずか20%であることが判明している。
パナソニックは、テレビやDVDレコーダー、携帯電話機などのデジタル家電製品ごとに異なるソフトウェアやハードウェアを開発するのではなく、SoC上のソフトウェアの再利用を大幅に増やせるようにUniPhierという共通プラットフォームを設計した。
UniPhierはCPUコアとビデオコーデックを含んだシステムLSIと、OSとミドルウェアを組み込んだソフトウェアで構成されている。
パナソニックの広報担当者は、富士通とパナソニックが新たに設立するシステムLSI会社がプラットフォーム UniPhierを引き継ぐかどうかについて、「現時点ではまだ分からない」と慎重に答えた上で、「詳細は新会社の中で協議する必要がある」と述べた。
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