富士通は2014年7月31日、300mmウエハーラインを持つ三重工場を含む全ての工場を半導体事業を行う子会社富士通セミコンダクターから独立させ、ファウンドリ事業会社とすることなどを柱にした半導体事業の再編策を発表した。
富士通は2014年7月31日、300mmウエハーラインを持つ三重工場を含む全ての工場を半導体事業を行う子会社富士通セミコンダクターから独立させ、ファウンドリ事業会社とすることなどを柱にした半導体事業の再編策を発表した。2014年4月に基本合意していたパナソニックとのシステムLSI事業統合についても、正式合意した。
富士通セミコンダクターが運営する工場は、会津若松地区の150mmウエハー工場と、同地区の200mmウエハー工場、300mmウエハーラインを持つ三重工場の3工場ある。これを三重工場を運営する新会社(三重ファウンドリ会社)と、会津若松地区の2工場の運営を統括する新会社(会津ファウンドリ統括会社)と、会津ファウンドリ統括会社の下に150mmウエハー工場運営会社と200mmウエハー工場運営会社を新設する。いずれも2014年内の会社設立をめざす。
三重工場に関しては、2013年2月以来、TSMCとの合弁によるファウンドリ会社として独立させることを狙ってきたが交渉が難航。交渉先をTSMC以外にも広げ、パートナーを模索してきたが、パートナーとの正式合意を待たず、ファウンドリ会社として独立させることになった。なお、パートナーとの交渉については、「継続的に進めている」(富士通執行役員常務塚野英博氏)とし、近い将来での合意を目指している。
また会津ファウンドリ統括会社下の200mmウエハー工場運営会社については、同日に富士通セミコンダクターがファウンドリ契約を結んだオン・セミコンダクターが出資比率10%に相当する7億円を出資することが決まっている。
2014年4月23日に基本合意していたパナソニックとのシステムLSI事業の統合(関連記事)についても、統合新会社に出資を行う日本政策銀行(DBJ)を含めた3者で正式契約に至った。3者は2014年10〜12月中に、製造拠点を持たないファブレス型のシステムLSI専業会社を設立する。出資比率は、基本合意時点と変わりなく、富士通40%、DBJ40%、パナソニック20%。従業員規模は約2800人規模でのスタートを予定し、「数年後の新規株式公開を目指す」との方針を掲げる。
富士通では、半導体事業再編の進捗(しんちょく)について、「(再編完了に向けた)道筋は全てついている。8合目、9合目までは来ている」(塚野氏)とし、課題として残っている三重工場の共同運営パートナーとの交渉についても順調さをアピールした。
富士通は2013年2月に、パナソニックとのシステムLSI事業統合、三重工場の切り離し策などを発表(関連記事)して以来、抜本的な半導体事業の再編を実施してきた。システムLSI事業と並ぶ主力の半導体ビジネスだったマイコン/アナログ半導体事業は2013年8月にスパンションに売却した(関連記事)他、次世代のパワー半導体として期待されるGaNデバイスを扱うパワーデバイス事業は、米国の新興企業トランスフォームに出資した上で、同社に同事業を移管(関連記事)しており、半導体設計から製造、販売までを単独で手掛ける事業はFRAM(強誘電体メモリ)を扱うシステムメモリ事業だけとなる。
製造工場の分社独立も、「工場の稼働率を高めることが重要であり、富士通単独で、工場を埋め、収益を上げていくことは難しいと判断した。半導体製造能力を必要とするパートナー、ないし、投資を行える資金のあるパートナーと連携していくことが良いシナリオだと考えている」(塚野氏)とし、外部からの出資を得やすい体制への移管が主な狙い。
今後、富士通としての半導体事業の方針については塚野氏、「回路設計、レイアウト設計、製造といった半導体の一連の流れで言えば、回路設計については自社で手掛けるが、それ以外についてはパートナーと協業していく」とした。
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