日本では、ソニーとパナソニック、ジャパンディスプレイが、有機ELディスプレイの量産開発加速および早期事業化を目的として新会社「JOLED(ジェイオーレッド)」を、2014年7月31日に立ち上げた(関連記事:ソニーとパナソニックの有機EL技術を結集、新会社「JOLED」設立へ)。
日本にとっては、国家全体で数十年にわたり手掛けてきた、有機EL関連の技術能力や研究開発資源を最大限に利用することにより、国内で有機ELディスプレイ開発に対する情熱をよみがえらせるための、最後のチャンスとなるだろう。
パナソニックで調査ディレクタを務めるTakuya Komoda氏は、JOLEDには非常に大きな期待を寄せていると述べる。「パナソニック出身とソニー出身のエンジニア同士で、よく話し合いを行っている。有機EL関連において互いの企業が持つ実績を尊重している」(同氏)。
JOLEDのターゲットは、Samsung ElectronicsやLG Electronicsが多大なリソースを費やしている大型有機ELディスプレイではない。それよりも、「材料と端末に、研究開発の焦点を当てる」(Komoda氏)という。同氏は、「有機LEDディスプレイの本当の利点は曲げられることではない。軽量で耐久性のあるモバイル機器向けディスプレイを作れることだ」と強調した。
InnoluxとAUOはいずれも、モバイル機器向けとして、アモルファスシリコン(a-Si)TFTディスプレイと低温ポリシリコンTFTディスプレイのさらなる改善に取り組むことにより、リスクを分散していきたい考えだ。Innoluxは、画素密度430ppiの5.5インチa-Si TFTディスプレイ(フルHD)の開発に成功している。業界では一般的に、スマートフォンメーカーから400ppi以上の高精細ディスプレイに対する要望があった場合には、歩留まりの問題は残るもののLTPS TFTで対応すべきだという“暗黙の了解”のようなものがあった。このため、今回のInnoluxのa-Si TFTディスプレイは、画期的な成果だといえる。
一方、ジャパンディスプレイの子会社であるTaiwan Display(TDI)でチェアマン兼CEO(最高経営責任者)を務めるTing-Chen Hsu氏は、「高解像度ディスプレイを実現する上で、LTPS技術は不可欠だ」と主張する。ディスプレイにタッチセンサーを組み込む技術は、Appleが採用している「インセルテクノロジー(in-cell technology)」としても知られているが、ジャパンディスプレイとTDIは、このような技術にはLTPSが最適だと確信しているという。
Hsu氏は、「LTPSはコスト面でも、a-Siに対する競争力がある。ジャパンディスプレイも、LTPS技術による生産能力を大幅に増強している」と述べている。
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